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(18)胸騒ぎ

尽くんが忙しいなら…

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 親睦会とは銘打たれているけれど、要は取引のある業者の人間なども多数入り乱れての、いわゆる人脈造りも兼ねたパーティのようなものだ。

 常務取締役という役付のじんは、当然平社員の天莉あまりと違ってこなさねばならないことが多いらしく、檀上に上がって挨拶スピーチをしたり、取引先のお偉いさんたちの相手をしたりとやるべきことが山積みらしい。

 当然秘書の直樹も、そんな尽のそばに付き従うとかで、天莉のそばに自分の息が掛かった者が付いていられないことを、尽は物凄く不満げにしているのだ。

「そんなに心配しなくても……私も、今までだって何度も親睦会には参加してきてる……よ?」

 入社して五年。
 新人の頃ならともかく、さすがにもう誰かに付いていてもらわないと不安……だなんてことはない。――と思う。

 この、モヤモヤとスッキリしない、いわれなき胸騒ぎさえなければ、もっとスパッと言い切って、尽のくもった顔を晴らしてあげられるのに。

 そんなことを思って、内心落ち着かない天莉だ。

博視ひろしと別れて初めての親睦会だから、かなぁ)

 この五年間、天莉あまりは博視が嫌がるからと、博視以外の社員たちと仕事以外の関わりを持つことを極力避けるようにしてきた。

 向こうから話し掛けられても、後に二人きりになった時、博視があからさまに不機嫌になるのが面倒でたまらなかったのだ。

 気が付けば、天莉は仕事以外では取っ付きにくい女性として、社の中で浮いた存在になってしまっていた。

 それでも通常業務においては何ら支障はない。けれど、今日のようなイレギュラーな案件ともなれば、話は別だ。

 博視と別れたからと言って、突然皆の輪に入っていって話し相手を見つけることが、果たして天莉に出来るだろうか?

(きっと今更なに?って思われちゃうよね……)

 この心のざわつきは、そう言う漠然とした不安もあるのかも知れない。

(……あ、そうだっ)

 例年ならば天莉は博視対策も兼ねて、自らの志願で〝裏方スタッフ側〟に徹していたのだけれど、今年もそうしたらどうだろう?

 じんの動向が分からなかったので、いつものように前もって挙手していたわけではないけれど、手伝いたいと申し出れば、経験者の天莉はきっと歓迎してもらえるはずだ。

「尽くんが忙しいなら、今年も運営側のお手伝いをしようかな……?」

 そんなことを思って何気なくつぶやいたら、尽から「それは承服しかねるね」と即座に駄目出しされてしまう。

 もちろん尽だって、天莉が毎年率先してそう言うことをしていたのは把握していたらしい。

 そう言う面も含めて、天莉が博視ひろしにフラれたと知った際、自分の契約婚の相手として相応しいのはあんな女性だなと、やや打算的に白羽の矢を立てたところもあったんだ、すまない……と心底申し訳なさそうに告白して。

 その上で、尽が続けた。



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