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(16)私だけの呼び方*
第三の選択肢を
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「おや? さっき言わなかったかね? 酔った天莉を一人で入浴させるのは危険だから出来ない、と」
「だからっ。もう酔ってなんかい、ひゃぁっ!」
酔ってなどいないと言い切りたかったのに、わざとだろう。
尽が絶妙のタイミングで天莉の耳孔にふぅっと吐息を吐き掛けてくるから。
天莉は言葉半ばで声を上ずらせてしまった。
「ほらね? 今もしっかりと挙動不審だ」
「そっ! それは常務がっ!」
必死に尽の詭弁に対抗しようと口を開いた天莉に、尽が「はぁー」とあからさまに大きく吐息を落とすと、まるで天莉がいけないみたいに眼鏡の奥から心底困ったように眉根を寄せて見せる。
「……ホント、キミはどれだけ俺にお仕置きされたいの?」
わざとらしく「優しくしたいのに……」とどこか嬉し気に付け加えてくるその言動からして、絶対今の困り顔もポーズに違いないと天莉にも分かっているのに。
何を言っても尽のペース。
何ひとつ思い通りになんてなりそうにない。
「じっ、尽くんの意地悪っ」
結局堂々巡り。
さっき尽から「その通りだよ」と悪びれた様子もなく肯定された非難を再度口の端に乗せて尽の腕の中。天莉はキッと尽を睨み上げた。
「決めた」
だが、その反抗的な態度がいけなかったんだろうか。
尽はクスッと笑うと、眼鏡を洗面化粧台の上に置いて、「優柔不断な天莉に代わって俺が決めてやろう」と意味不明なことを言い始める。
「ふぇっ!?」
キョトンと尽を見上げる天莉に、眼鏡を外してもそれほど支障はないのだろうか。
尽がニヤリと笑うと、「第三の選択肢を決行するとしよう」と、高らかに宣言した。
***
そこからはもう天莉の抵抗なんてどこ吹く風。
尽は器用に天莉を生まれたままの姿に剥いてしまうと、自分は着衣のまま天莉と向き合った。
「ヤダっ、尽くっ、な、んでっ!?」
「だって天莉、俺が服を脱ぎ始めたら逃げようとか思ってただろ?」
「――っ!」
天莉の性格からしてきっとそうだろうな?と推測して動いたのだが、尽の指摘に見開かれた天莉の双眸が、『何で分かったの!?』と語り掛けてくるようで、思わず笑ってしまった尽だ。
(可愛すぎだろ、天莉)
「俺はね、別にあとから一人で入り直してもいいんだ。だから――」
真っ裸の天莉をじっと見つめていたい気持ちはある。
だけどあんまり追い詰めたら可哀想だな?とも思って。
尽はいつも愛用している今治の肌触りの良いフェイスタオルを一枚天莉に手渡すと、にっこり微笑んだ。
「何もないのは気持ち的にしんどいだろう?」
(まぁ、タオルの一枚や二枚、その気になれば何とでも出来るしね)
などと心の中で思っていることはおくびにも出さず――。
天莉は、尽の手渡したフェイスタオルをまるで最後の縁ででもあるかのように胸前で抱き締めると、零れ落ちそうにたわわな胸を隠すみたいにぎゅっと押さえつけた。
その様が、今すぐ抱きしめたくなるほど可愛いと思ってしまった尽だ。
「だからっ。もう酔ってなんかい、ひゃぁっ!」
酔ってなどいないと言い切りたかったのに、わざとだろう。
尽が絶妙のタイミングで天莉の耳孔にふぅっと吐息を吐き掛けてくるから。
天莉は言葉半ばで声を上ずらせてしまった。
「ほらね? 今もしっかりと挙動不審だ」
「そっ! それは常務がっ!」
必死に尽の詭弁に対抗しようと口を開いた天莉に、尽が「はぁー」とあからさまに大きく吐息を落とすと、まるで天莉がいけないみたいに眼鏡の奥から心底困ったように眉根を寄せて見せる。
「……ホント、キミはどれだけ俺にお仕置きされたいの?」
わざとらしく「優しくしたいのに……」とどこか嬉し気に付け加えてくるその言動からして、絶対今の困り顔もポーズに違いないと天莉にも分かっているのに。
何を言っても尽のペース。
何ひとつ思い通りになんてなりそうにない。
「じっ、尽くんの意地悪っ」
結局堂々巡り。
さっき尽から「その通りだよ」と悪びれた様子もなく肯定された非難を再度口の端に乗せて尽の腕の中。天莉はキッと尽を睨み上げた。
「決めた」
だが、その反抗的な態度がいけなかったんだろうか。
尽はクスッと笑うと、眼鏡を洗面化粧台の上に置いて、「優柔不断な天莉に代わって俺が決めてやろう」と意味不明なことを言い始める。
「ふぇっ!?」
キョトンと尽を見上げる天莉に、眼鏡を外してもそれほど支障はないのだろうか。
尽がニヤリと笑うと、「第三の選択肢を決行するとしよう」と、高らかに宣言した。
***
そこからはもう天莉の抵抗なんてどこ吹く風。
尽は器用に天莉を生まれたままの姿に剥いてしまうと、自分は着衣のまま天莉と向き合った。
「ヤダっ、尽くっ、な、んでっ!?」
「だって天莉、俺が服を脱ぎ始めたら逃げようとか思ってただろ?」
「――っ!」
天莉の性格からしてきっとそうだろうな?と推測して動いたのだが、尽の指摘に見開かれた天莉の双眸が、『何で分かったの!?』と語り掛けてくるようで、思わず笑ってしまった尽だ。
(可愛すぎだろ、天莉)
「俺はね、別にあとから一人で入り直してもいいんだ。だから――」
真っ裸の天莉をじっと見つめていたい気持ちはある。
だけどあんまり追い詰めたら可哀想だな?とも思って。
尽はいつも愛用している今治の肌触りの良いフェイスタオルを一枚天莉に手渡すと、にっこり微笑んだ。
「何もないのは気持ち的にしんどいだろう?」
(まぁ、タオルの一枚や二枚、その気になれば何とでも出来るしね)
などと心の中で思っていることはおくびにも出さず――。
天莉は、尽の手渡したフェイスタオルをまるで最後の縁ででもあるかのように胸前で抱き締めると、零れ落ちそうにたわわな胸を隠すみたいにぎゅっと押さえつけた。
その様が、今すぐ抱きしめたくなるほど可愛いと思ってしまった尽だ。
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