【完結】【R18】崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
13 / 264
(3)尽からの提案

コンプライアンス

しおりを挟む
 嫌味に思われるかもしれないが、客観的に見ても自分は男としてはかなりの優良物件だと思うし、容姿だって恵まれている部類に入る。
 話術だって人よりは長けているつもりだ。

 おのれのふところに取り込んでしまいさえすれば、何とか出来る自信がある。


「動きがあったら真っ先にお前に連絡する。俺は直樹なおが思ってる以上にお前のこと、買ってるからな」

「――それは公私どちらの意味で?」

「もちろん、両方だよ」

 ククッと笑って心配性な幼馴染みに「お疲れ」と手を振りながら背を向けると、じんは裏口詰め所にいた警備員へ声をかけてエレベーターに乗り込んだ。

 誰が残っているにせよ、常務の務めとしてこんなに遅くまで社員が残らねばならない理由ぐらいは把握しておきたい。

 こういう細々こまごまとした日々の積み重ねが、会社全体にほころびを生むことだってあるからだ。


 いつもは自室のある八階まで一気に上がることが多い尽だ。
 エレベーターに乗り込むなりつい癖で操作パネルの【8】を押してから、『あ』と思って【7】も押した。
 直樹が一緒ならこんなミスはしない気がして『頼り切りはいかんな』と苦笑する。
 ついでに彼が一緒なら間違えて押した行先ボタンの取り消しもしてくれただろうが、面倒なのでそのままにした。

 予定では七階で降りて電気の付いていたフロア――恐らく総務課――へ顔を出すはずだったのだが、目的の階に着いてドアが開いたと同時。
 目の前に幽鬼のような様相で、ふらりふらりぐらつきながらひとりの女性が立っていた。

(残業していたのはやはり彼女だったか)

 パッと見て、先日ホテル前で見かけた玉木たまき天莉あまりだと分かったのだが。

 想像以上に参っている様子の彼女に、尽は声を掛け損ねてしまった。

 いつもの自分ならそれぐらいの不測の事態、何ということもなく乗り越えられるのに。

(……調子が狂うな)

 明らかに体調が悪そうに見えたから、てっきり帰宅するつもりでエレベーターを待っていたんだろうと思ったのに、天莉あまりは何故か最上階行きになったままのこの箱へ乗り込んできた。

 そのことに軽く驚いたじんは、柄にもなく息を呑んで。

 扉が閉まるなり、取り消しボタンを押していなかった箱がそのまま上昇を開始したから、(ちょっと待て。俺はともかく本当に彼女は上へ上がるんでいいのか?)とますます不審に感じたじんだ。

(この状態で、上の階に何の用があるんだ?)

 そう思いながら、手すりに捕まって何とか立っている様に見える天莉を観察する。

 結局のところ、単なる操作ミスだったらしいと、天莉の慌てぶりを見て容易に推察が出来た尽だったのだが。

 自分が「さてどうやって彼女を絡めとるか」と策を巡らせるより先に、目の前で天莉が倒れてしまったから。

 とりあえず手っ取り早く天莉を休ませることが出来そうな自室ここへ運び込んだ尽だ。

 だが――。

(いくら非常事態だからって……おとことふたりきりになってしまうような個室へ女性社員を連れ込んだのは法令遵守コンプライアンス的にまずかったんじゃないか?)

 今更のようにそんな当たり前のことに気が付いて、無意識に吐息が漏れた。

 きっとこの場に直樹なおきがいたならば、「お前、やっぱりバカだろ?」と叱られていたことだろう。

 尽はソファに寝かせて自分の上着を羽織らせた天莉の様子を遠目に見遣りながら、携帯を手に取った。

 電話帳から呼び出したのは、先程帰したばかりの〝伊藤直樹おさななじみ〟。

 尽は眠っている様子の天莉を起こさないで済むよう、直樹に用件だけ手短にメールした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...