上 下
102 / 105
19.始まりの日*

私、修太郎さんとの赤ちゃん、たくさん、たくさん欲しいのですっ!

しおりを挟む
 暗闇の中。喉の渇きにふと目を覚ますと、修太郎の腕の中で。

 一瞬、何が起こっているのか状況への理解が追いつかなくて思わず「ひゃ、しゅっ⁉︎」と変な声の出た日織ひおりだ。


「……お目覚めに、なられましたか?」

 その気配に、日織と一緒に眠っていたらしい修太郎が目を開けて、腕の中の日織をギュッと抱きしめて逃さないようにする。


「あ、あのっ、き、ききちゃんたちは……」

 恐る恐る聞いてみたら、「もう随分前に帰られましたよ」と言われて大ショックの日織だ。

「そんなっ」

 眉根を寄せてつぶやいたけれど、寝落ちしてしまった自分の責任なので誰にも文句が言えなくて。

 しゅん……と落ち込んでいたら、修太郎から、「新婚旅行の途中できっとお会い出来ますよ」と頭を撫でられた。

 今は夜中だから無理だけれど、旅先で落ち着いたらききちゃんに打診してみよう!と思った日織だった。


***


 妻に甘々な修太郎は、日織からのたっての希望を聞く形で、旅行先を葵咲きさきたちの住む町に隣接した大型テーマパークにしていた。

 入籍からは間が空いてしまっていたけれど、挙式日前後の結婚休暇も認められていたので、それを利用した修太郎だ。

 扱い的には有給休暇で、職員課からは最長で五日間取れると言われたのだけれど、管理職という立場も考慮したら四日間がギリギリラインだった。

 とは言え、三泊四日ともなれば、少し遠出をして北海道や沖縄に行くのもいいかなと思っていた修太郎だったのだけれど。
 結局日織ひおりが行きたがったのは幼なじみの住まう関東地方だったから、大して考えもせずそれに合わせることにした。

 正直、修太郎は日織と一緒にいられるならば、例えマンションで引きこもりの三泊四日(?)だったとしても、全く問題がないと思っていたくらいだ。

 まぁ、そんなことを日織に言おうものなら「それじゃあ〝新婚〟にならないのですっ!」と怒られてしまうだろうが。

(でも、仕事のことを気にせず、日がな一日昼夜を問わず日織さんとむつみ合っていられるとか……。想像するとかなり魅力的なんですが)


 そこまで考えて、一緒に住みたい一心だったのだろう。
 かつて、日之進にちのしんから同棲の許可が降りないことにごうを煮やした日織から、をされたことをふと思い出した修太郎だ。


(今でしたら日織さんさえお望みとあらば、いくらでもあの時の願いをのですが……)


 腕の中でソワソワと自分を見上げてくる日織を見て、修太郎は心の中、一人〝それ〟を実現させた時を思って言いようのない幸福感に満たされる。


「あ、あの……修太郎さん……わ、私、喉が渇いたのです」

 そんな修太郎を恥ずかしそうに見上げて、日織がそんなことを言ってきて。

 腕を緩めて欲しいと目で訴えてくる。

 修太郎は「待っていて?」と日織ひおりをベッドに横たえると、キッチンに飲み物を取りに行った。

 お酒を飲んだ日はやたら喉の渇きを覚えるものだけれど、きっと日織もそうなんだろう。

 水が苦手で、炭酸水ならば飲める日織のために、炭酸水の入ったペットボトルとグラスを手に戻って来てみると、日織がベッドの上にちょこんと正座していた。

「日織さん?」

 何事だろう?と不思議に思って呼びかけると、

「しゅ、修太郎さんっ、あの……私、今夜は大切な初夜なのにこんなっ。本当に……本当に申し訳ないのですっ」

 言って、ガバリと頭を下げて。

 修太郎はベッドサイドにグラスと炭酸水を置くと、そんな日織ひおりをギュッと腕の中に抱きしめた。


「ねぇ。でしたら……今から……いいですか?」

 問えば、ピクッと日織が身体を震わせたのが分かった。

「で、でもっ、明日は朝早くに空港に向かわないといけないのですっ……」

「……はい。飛行機での移動なので、最悪の場合そこで眠れますね」

 当然のように言ったら、日織がまるでキュッとしがみついてきた。


「――は、始める前に……お水を飲ませてくださいますか?」

「もちろんです」

 修太郎はグラスを無視してペットボトルに直に口をつけると、シュワシュワと泡立つよく冷えた炭酸水を口に含んで。

 そのまま日織ひおりに口移しで飲ませてやった。

 修太郎はそれを繰り返しながら、片手で日織のシャツワンピのボタンを器用に外していく。

「終わったら一緒にお風呂に入りましょうね」

 言いながら、服が肌蹴てあらわになった、日織のふわふわの胸元に指先を這わせる。

「あんっ、……しゅぅ、たろぉ、さっ」 

 触る前からツンと固く尖っていた先端をブラ越しに引っ掻いて日織の身体を小さく跳ねさせると、乱れた裾をたくし上げてショーツの上から日織の一番敏感なところを愛撫する。

 口移しで水を飲ませている時から既に期待で高まっていたのだろうか。

 それほど触れていないはずの日織の下肢は、クロッチのところが既にしっとりと肌に張り付いていて。

 生地の隙間から中に指を滑り込ませると、クチュリと濡れた音を立てて修太郎の理性を奪った。

 修太郎は彼女の膣内なかに指を埋めながら、日織ひおりの耳元で甘く淫らに囁く。

「ね、。――今日は……構いませんか?」

 いつもなら避妊具を手に取るところを、その工程を省いてもいいですか?と問えば、「……はい」と日織が嬉しそうに頷いてくれる。

 それは、日織がかつて〝既成事実〟さえ作ってしまえばふたりで一緒に暮らせると信じて、修太郎におねだりしてきた事だった。
 あの時は結婚式を無事終わらせるまでは、と丁重に無理な理由をお話ししてお断り申し上げたのだけれど。

 今ならば――というかこれから先はいつだって――日織さえそのつもりでいてくれるなら、何ひとつ障害はない。


「私、修太郎さんとの赤ちゃん、……たくさん、たくさん欲しいのですっ!」

 そう言えば花嫁控え室でも、ご両親を前にそんな宣言をなさっていたな、と思い出した修太郎だ。

「子供、いっぱいいっぱい作りましょう! ――今日は……僕たち家族の記念すべき始まりの日です」


 言って、修太郎は日織のヌルリと潤んだ入り口に、自身のたかぶりを当てがった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】【R18短編】その腕の中でいっそ窒息したい

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
私立大学の三年生である辻 朱夏《つじ あやか》は大層な美女である。 しかし、彼女はどんな美形に言い寄られてもなびかない。そんなこともあり、男子学生たちは朱夏のことを『難攻不落』と呼んだ。 だけど、朱夏は実は――ただの初恋拗らせ女子だったのだ。 体育会系ストーカー予備軍男子×筋肉フェチの絶世の美女。両片想いなのにモダモダする二人が成り行きで結ばれるお話。 ◇hotランキング入りありがとうございます……! ―― ◇初の現代作品です。お手柔らかにお願いします。 ◇5~10話で完結する短いお話。 ◇掲載先→ムーンライトノベルズ、アルファポリス、エブリスタ

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

【R18】優しい嘘と甘い枷~もう一度あなたと~

イチニ
恋愛
高校三年生の冬。『お嬢様』だった波奈の日常は、両親の死により一変する。 幼なじみで婚約者の彩人と別れなければならなくなった波奈は、どうしても別れる前に、一度だけ想い出が欲しくて、嘘を吐き、彼を騙して一夜をともにする。 六年後、波奈は彩人と再会するのだが……。 ※別サイトに投稿していたものに性描写を入れ、ストーリーを少し改変したものになります。性描写のある話には◆マークをつけてます。

若妻シリーズ

笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。 気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。 乳首責め/クリ責め/潮吹き ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/SplitShire様

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

【R18】溺愛ハッピーエンド

ななこす
恋愛
鈴木芽衣(すずきめい)は高校2年生。隣に住む幼なじみ、佐藤直(さとうなお)とちょっとえっちな遊びに夢中。 芽衣は直に淡い恋心を抱いているものの、はっきりしない関係が続いていたある日。古典担当の藤原と親密になっていくが――。 幼なじみと先生の間で揺れるちょっとえっちな話。 ★性描写があります。

処理中です...