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16.酒蔵祭り
せっかくだから日織に酒を振る舞われたい
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今回の酒蔵祭り。
昭和の日の開催で、最低気温こそ十四度ちょっとと大分温んできてはいるけれど、それはあくまでも街中での体感温度の話。
祭りは会場が河川敷なので、常に川風に吹きさらされた寒い場所での開催なのだから。
景観的には修太郎が日織にプロポーズをした錦帯橋をバックにしているのでとても映えるのだが、それと過ごしやすいかどうかはまた別の話。
会場には各ブースごとに三面に風よけのついたイベント用テントが設営されると聞いてはいるが、一面が全開な以上、それで川風が完璧に防げるとは思えない。
それに、下手したら突風でテントが倒れる可能性もあるじゃないか、とか考え始めたら心配が尽きなくて胃がキリキリと痛くなる。
修太郎は、とにかく何もかもが気掛かりで仕方がないのだ。
叶うことなら自分がずっと日織のそばに立って、彼女を様々な危険性から守りたい。
(法被の中に入って、日織さんと二人羽織できたらいいのに)
とか何とか馬鹿なことを思っていたりするけれど、さすがにそれは言わずにおいた。
***
「では、行ってまいりますねっ」
河川敷に到着して。
まだイベントが始まる前だったからだろう。案外すんなりすぐそばの駐車場まで車を入れることが出来た。
このままここに駐車しておいても構わないのだけれど、せっかくだから日織に酒を振る舞われたい修太郎だ。
車は一旦マンションに置きに帰る算段になっている。
その後、バスかタクシーで戻って来て、日織と再会を果たす予定だ。
そう心に決めたはずなのに、いざ日織が車から降りるとなると、つい引き止めたくなってしまう往生際の悪さはしっかりと健在らしい。
「あっ、あのっ、日織さんっ!」
車から降りようとドアハンドルに手をかけた日織を呼び止めると、
「か、髪っ! 下ろしておかれた方が首筋、温かくないですか?」
などとこの期に及んでどうでもいい提案を投げ掛けてみたり。
今日の日織は――と言うより羽住酒造へバイトに行くときはいつも――髪の毛を後ろでひとつに束ねてポニーテールにしている日織だ。
色素の薄い髪の毛が、日織が頭を動かすたびに勢いよく揺れる様が可愛くていい。
いいのだけれど――。
昭和の日の開催で、最低気温こそ十四度ちょっとと大分温んできてはいるけれど、それはあくまでも街中での体感温度の話。
祭りは会場が河川敷なので、常に川風に吹きさらされた寒い場所での開催なのだから。
景観的には修太郎が日織にプロポーズをした錦帯橋をバックにしているのでとても映えるのだが、それと過ごしやすいかどうかはまた別の話。
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それに、下手したら突風でテントが倒れる可能性もあるじゃないか、とか考え始めたら心配が尽きなくて胃がキリキリと痛くなる。
修太郎は、とにかく何もかもが気掛かりで仕方がないのだ。
叶うことなら自分がずっと日織のそばに立って、彼女を様々な危険性から守りたい。
(法被の中に入って、日織さんと二人羽織できたらいいのに)
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***
「では、行ってまいりますねっ」
河川敷に到着して。
まだイベントが始まる前だったからだろう。案外すんなりすぐそばの駐車場まで車を入れることが出来た。
このままここに駐車しておいても構わないのだけれど、せっかくだから日織に酒を振る舞われたい修太郎だ。
車は一旦マンションに置きに帰る算段になっている。
その後、バスかタクシーで戻って来て、日織と再会を果たす予定だ。
そう心に決めたはずなのに、いざ日織が車から降りるとなると、つい引き止めたくなってしまう往生際の悪さはしっかりと健在らしい。
「あっ、あのっ、日織さんっ!」
車から降りようとドアハンドルに手をかけた日織を呼び止めると、
「か、髪っ! 下ろしておかれた方が首筋、温かくないですか?」
などとこの期に及んでどうでもいい提案を投げ掛けてみたり。
今日の日織は――と言うより羽住酒造へバイトに行くときはいつも――髪の毛を後ろでひとつに束ねてポニーテールにしている日織だ。
色素の薄い髪の毛が、日織が頭を動かすたびに勢いよく揺れる様が可愛くていい。
いいのだけれど――。
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