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15.甘やかしと言う名のお仕置き*
修太郎さんに欠けているもの
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「あ、あの……日織、さん……? 今のはその……」
「本気なのですっ」
修太郎の言いたいことなんてお見通しだと言わんばかりに日織が修太郎の両ももに手を載せたまま身を乗り出して。
「伴侶のことを愛しく思っているのは、修太郎さんだけじゃないのですっ!」
言って、日織がすぐ間近から修太郎を見上げてくる。
「今から私が修太郎さんに欠けているものをじっくり補って差し上げるのです。覚悟してくださいね?」
澄んだブラウンアイで見詰められて、頬に手を添えられた修太郎は言葉を失って。
「僕に……欠けているもの?」
と、呆然とつぶやく唇を日織がチュッと掠めるように一瞬だけ塞いだ。
「はい。修太郎さんには決定的に足りないものがひとつだけあるのですっ。それがいつもいつも私たちの間に波風を立てるんです。だから、絶対絶対見過ごせないのです!」
修太郎自身としては、ひとつどころか自分は欠けたところだらけだという自覚があるのだけれど、日織はそうは思っていないみたいだ。
口にフワッと触れた日織の柔らかな唇の感触と、彼女が身体を離すときに香った、ふんわりと甘い香り。
それらにぼんやりしながらも、修太郎はすぐそばの日織をじっと見つめて。
「――?」
自分のダメなところを挙げ始めたら枚挙にいとまがない気がするのに、では日織が言う「ひとつ」とは何だろう?と思うと皆目検討がつかなくて。
修太郎は言葉を紡げないままに日織を見つめ返す。
そんな修太郎に、日織がにっこり笑って宣言した。
「修太郎さんに足りないのは〝私に愛されているという実感〟なのです!」
それが足りなさすぎて、いつもいつも変なことになっているのです、と日織が鼻息も荒く力説して。
だからこそ、と修太郎の下腹部を小さな手でソロソロとなぞった。
「や、やり方はさっぱり分からないのですけれど……私、頑張るのですっ」
***
恐る恐ると言った様子で、日織の小さな手が修太郎のズボンの前立て付近に掛かる。
修太郎はその様を半ば呆然と夢でも見ているような気分で見下ろして――。
でも、日織が「んーっ! んーっ!」と小さな掛け声を掛けながら自分のズボンのボタンを開けるのに苦戦しているのを見ていたら、段々調子が戻ってきた。
指先が真っ白になるほど力を込めている日織の手をそっと包み込むと、「僕が」と声を掛けて自らズボンの前をくつろげてやる。
日織はそんな修太郎を驚いたような顔で見上げてきて。
「しゅ、修太郎さんはやっぱり力持ちなのですっ!」
と謎の感想を漏らした。
恐らく自分が一生懸命外そうとしても外せなかったボタンを、修太郎が片手でいとも簡単に開けてしまったことに感心しているのだろう。
そういう、日織のどこか幼くさえ見える無邪気なところがたまらなく愛しく思えた修太郎だ。
「あの、日織さん? そんなに無理はなさらなくても――」
「本気なのですっ」
修太郎の言いたいことなんてお見通しだと言わんばかりに日織が修太郎の両ももに手を載せたまま身を乗り出して。
「伴侶のことを愛しく思っているのは、修太郎さんだけじゃないのですっ!」
言って、日織がすぐ間近から修太郎を見上げてくる。
「今から私が修太郎さんに欠けているものをじっくり補って差し上げるのです。覚悟してくださいね?」
澄んだブラウンアイで見詰められて、頬に手を添えられた修太郎は言葉を失って。
「僕に……欠けているもの?」
と、呆然とつぶやく唇を日織がチュッと掠めるように一瞬だけ塞いだ。
「はい。修太郎さんには決定的に足りないものがひとつだけあるのですっ。それがいつもいつも私たちの間に波風を立てるんです。だから、絶対絶対見過ごせないのです!」
修太郎自身としては、ひとつどころか自分は欠けたところだらけだという自覚があるのだけれど、日織はそうは思っていないみたいだ。
口にフワッと触れた日織の柔らかな唇の感触と、彼女が身体を離すときに香った、ふんわりと甘い香り。
それらにぼんやりしながらも、修太郎はすぐそばの日織をじっと見つめて。
「――?」
自分のダメなところを挙げ始めたら枚挙にいとまがない気がするのに、では日織が言う「ひとつ」とは何だろう?と思うと皆目検討がつかなくて。
修太郎は言葉を紡げないままに日織を見つめ返す。
そんな修太郎に、日織がにっこり笑って宣言した。
「修太郎さんに足りないのは〝私に愛されているという実感〟なのです!」
それが足りなさすぎて、いつもいつも変なことになっているのです、と日織が鼻息も荒く力説して。
だからこそ、と修太郎の下腹部を小さな手でソロソロとなぞった。
「や、やり方はさっぱり分からないのですけれど……私、頑張るのですっ」
***
恐る恐ると言った様子で、日織の小さな手が修太郎のズボンの前立て付近に掛かる。
修太郎はその様を半ば呆然と夢でも見ているような気分で見下ろして――。
でも、日織が「んーっ! んーっ!」と小さな掛け声を掛けながら自分のズボンのボタンを開けるのに苦戦しているのを見ていたら、段々調子が戻ってきた。
指先が真っ白になるほど力を込めている日織の手をそっと包み込むと、「僕が」と声を掛けて自らズボンの前をくつろげてやる。
日織はそんな修太郎を驚いたような顔で見上げてきて。
「しゅ、修太郎さんはやっぱり力持ちなのですっ!」
と謎の感想を漏らした。
恐らく自分が一生懸命外そうとしても外せなかったボタンを、修太郎が片手でいとも簡単に開けてしまったことに感心しているのだろう。
そういう、日織のどこか幼くさえ見える無邪気なところがたまらなく愛しく思えた修太郎だ。
「あの、日織さん? そんなに無理はなさらなくても――」
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