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13.好きなものを好きだと思うのは悪いことなの?

一斗さんは一斗さんなので

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 そこで一歩だけ下がって一斗いっとから距離をあけると、日織ひおりはどこか修太郎しゅうたろうを思い出させる雰囲気をまとった一斗いっとをじっと見上げた。


「ご自分の彼女が他の男性に頭を撫でられていたりしたらお嫌ではないのですか?」

 修太郎ならば絶対に「イヤだ」と即答してくれる。

 日織はそれを期待したのだけれど。


「う~ん、どうだろう。僕は別に気にならないかなぁ。だってただ頭を撫でるだけでしょう? 胸を触ってるとかだったらさすがに怒るけど」

 そう返ってきて、ハッとさせられる。

「今のお答えを聞いてホッとしたのですっ。――私、これからは一斗いっとさんに対して変に脳が混乱を起こしたりしなくてすみそうなのですっ。有難うございます!」

 にこやかに微笑んでそう言ったら、一斗いっとにキョトンとされた。

「ん? どういう意味?」

 聞かれて日織は「一斗いっとさん、何となく雰囲気が修太郎しゅうたろうさんに似ていらして時々ドキドキさせられていたんですっ。でもっ。彼女に対する考え方が全然違うなって思ったら何だかスッキリしたのですっ」と返す。

 それを聞いた一斗いっと
「わー、僕、答え間違えちゃったか」
 と心底残念そうな顔をして。

 それが日織ひおりにはおかしくてたまらなかった。

一斗いっとさんってば、変なのですっ。一斗いっとさんは一斗いっとさんなので、お答えに間違いも正解もないと思うのです!」

 フンッと鼻息も荒く一斗いっとの考え方は貴方だけのものなのだから、私の好み云々うんぬんなんて気にする必要はないのですっ!という気持ちで彼の考え方を全力で肯定したら、
「わーん! 何か、日織ちゃんから思いっきり脈なしって言われてしまったのですっ! 悲しいのです!」
 と一斗いっとが、日織の口調を真似て嘘泣きをして見せる。

 他の人にされたら腹立たしい真似っこも、何故か一斗いっとには腹の立たなかった日織だ。

 きっと修太郎しゅうたろうさんに感じているのとは違う意味で、一斗いっとさんには私、一目置いているんだろうな、と思ったりした日織だ。



一斗いっとさん、馬鹿なことを仰ってないで、真面目にお仕事を教えてください」

 そのくせ思ったことはビシッと言うところが何とも日織らしくて。

 一斗いっとは日織という女の子は本当に奥深いな、と思って感心する。
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