【完結】【R18】キス先② 大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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13.好きなものを好きだと思うのは悪いことなの?

蔵内見学

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 研修初日は善蔵ぜんぞう羽住はすみ酒造の中を案内してもらったり、羽住はすみ酒造で造られるお酒のことを色々聞かされたりでほとんどの時間が過ぎてしまった。

 中でも特に時間を掛けて見せてもらったのが蔵の中で。


 日織ひおり善蔵ぜんぞうとともに白の長袖・長ズボンに衛生キャップ白のぼうし姿に着替えて、蔵の中に入らせてもらった。

 その間、販売所の方を切り盛りしていたのは一斗いっとで。
 日織も、二日目からは酒まつりでの売り子の予行練習としてそちらが主な研修先になるのだと聞かされて、足手まといにならないよう頑張らなきゃ!と、涼しい顔で自分達を見送る一斗いっとを、ソワソワとした気持ちで見つめた。


***


 蔵の方では日織ひおりたち同様、白一色の服装に身を包んだ十升みつたかが、杜氏とうじである能見のうみの指導のもと、真剣な眼差しで蒸し上がったばかりの大量の米と向き合っている真っ最中で。

 離れた場所からでも蒸し立ての米から上がる熱気が伝わってくるなか、額に汗を浮かべた十升みつたかが、真剣な表情で熱々の米を手に取って押しつぶしたりしながら、めつすがめつしているのが見えた。


「あれはね、蒸し上がった米が狙った柔らかさに仕上がっているか、チェックしているんだよ」

 善蔵ぜんぞうにそう教えられて、日織ひおりは思わず感嘆の吐息を漏らしたのだ。

 硬すぎれば米の形が残るし、柔らかすぎれば粘ついてくっ付いてしまう。
 その辺りの絶妙な蒸し上がり加減を、職人の「感覚」を頼りに蒸しているのだと言う。
 現在十升みつたかは、その職人としての「勘」を養うために能見のうみに付いている形だ。

 ちなみに羽住はすみ酒造で使われている蒸し器は、昔ながらのこしきと呼ばれる 蒸籠せいろと同じ原理を持つ大きな釜のような機械なのだそうだ。
 連続蒸米機と呼ばれる、ベルトコンベアの上に敷いた米に蒸気を当てながら加熱していくものと違い、こしきは連続的に処理が出来ないため効率は悪い。
 代わりに、蒸しの調節が細かくできるため、良い蒸米むしまいが得られるというメリットを持つのだとか。

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