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5.尋問の夜*

落ち着かないのですっ!

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「あ、あのっ」

 オロオロと修太郎しゅうたろうを見上げたら、所在なく手にしたままだったバッグとコートを無言で取り上げられて、入ってすぐのところの作り付けのバゲージラックスペースと、ワードローブに各々仕舞われてしまう。

 バゲージラックスペースには既にひとつ黒い大きめの鞄が置かれていて、日織ひおりはそれを不思議に思う。
 修太郎は今日自分をここに送ってきてくれた際、こんな鞄は持っていなかったはずだ。
 そのことを修太郎に問いたいけれど、聞けるような雰囲気ではなくて。


 部屋は、入り口すぐのところに荷物を置くスペースが集約されていて、その向かい側がレストルームとバスルームのようだった。

 そのまま修太郎に手を引かれて奥に入ると、キングサイズのベッドがひとつと、ソファーとローテーブル、そして大型テレビが目につく。

 広い部屋なのにベッドがひとつきりしかないのに気が付いて、日織はソワソワと心がざわついて。

 修太郎の家に泊まりに行ったときも、修太郎の部屋のダブルベッドで一緒に寝起きしていることを思えば、別に今更という気もするのだけれど、今日は……。そう、何だか今日だけは。


 すっごくすっごく落ち着かないのです!と思ってしまった。



***



「とりあえずこちらへ」

 眼鏡を外してソファー前のローテーブルに置いた修太郎しゅうたろうに、日織ひおりはゾクリと肌が粟立ってしまうような冷たい視線を送られる。

 そんな修太郎から彼の方へ来るよう手招きされた日織は、自分の方へ差し伸べられた夫の手を取るべきか否かを戸惑い、呆然と立ち尽くした。



***





 そんな日織ひおりれたみたいに呼び捨てて少し強めの口調で呼ぶと、修太郎しゅうたろうは有無を言わせぬ雰囲気を醸し出す。

 狼を前にした非力な仔うさぎのようにビクッとして縮こまった日織が、おずおずと自分の手を取ったのを見計らって、修太郎は強引に日織を我が身に引き寄せた。
 そうしてそのままソファーに座る己の脚の上、日織の小さな身体を横抱きに載せる。

「っ! しゅーたろぉさっ!?」

 日織が半ば悲鳴まじりに修太郎の名を呼んで見上げてくるのへ、「どうして貴女はこんな時にまでそんなに可愛いんですかっ」と、眉根を寄せて理不尽なセリフを吐き捨てる。

「や、……んんっ!」

 激情のまま、不意に後頭部に添えた手で、日織のハーフアップにされた髪を鷲掴わしづかむように掻き乱すと、バレッタの留め具のつまみを押さえてしまったらしく、カチンと微かな音を立てて髪留めが外れた。

 支えを失ったパールとビジューで飾られた上品なバレッタが、カーペット敷の床に落ちる。

 それを合図に、修太郎は堪えきれないように日織へ性急な口付けを落とした。

 日織に息継ぎをさせる間でさえも惜しむみたいに彼女の口中を乱暴にかき回すと、逃げ惑う小さな舌を執拗に追い回し、追い詰め、絡め取り、痛いぐらいに吸い上げてなぶる。
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