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3.今の男は誰ですか?

僕は上手く笑えていただろうか?

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 修太郎しゅうたろうの愛しくてたまらない妻が、自分の運転するアルファードから降りて、外の冷気にふるりと震える素振りを見せた後、「い、行って参りますっ!」とどこか緊張した面持ちでビシッ!と敬礼した。

「行ってらっしゃい、日織ひおりさん。――僕のことは気にせず、目一杯楽しんでいらっしゃい」

 それを見て、日織の緊張をほぐすみたいに虚勢を張って笑顔でそう送り出してはみたものの、その実、修太郎はすぐさま彼女を呼び止めたい衝動を必死で押さえつけていた。

 ネイビーカラーの落ち着いた色合いのフレアスリーブワンピースに、ピンクベージュのパンプスを合わせて、上にAラインの白いガーリーコートを羽織った日織は、常より少し大人っぽく見えて……。

 修太郎は日織のその出立ちに、不安げに眉根を寄せた。

(こんなに愛らしい子を、会場の男たちは放っておいてくれるだろうか)

 そんなことを思って「やはり行くのはお辞めになりませんか」と言いたくなる。

 それをグッと堪えて
「同窓会、終わられたらお迎えにあがりますので連絡してくださいね?」
 と言えば、
「もちろんなのですっ」
 と、はにかむ様がまた可愛くて。

 いつもは色素の薄いサラサラの姫カットの髪の毛を何もせずにサラリと下ろしている日織だったけれど、今日はハーフアップにしているのも相まって、首筋からデコルテにかけてのラインがやたらと見えている。

 ニコッと微笑んで手を振った日織の左手薬指に光る指輪を、思わずすがるような気持ちでじっと見つめて――。
 「楽しんでいらっしゃい」と告げた手前、歩き去っていく愛しい妻を引き止める訳にもいかず、ハンドルを握る手に我知らず力が入った。

(極力感情を抑えて見送ったつもりだったけれど、僕は上手く笑えていただろうか?)

 そんな事を思ってしまった修太郎である。

 結局日織を送り出してすぐ、日織の同窓会会場となっているホテル所有の駐車場に車を停めた修太郎は、そこの1階ロビーにある喫茶店に入った。
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