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3.今の男は誰ですか?

随分お待たせしてしまったのです

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 今日の同窓会もそうだけど、小学生の頃、羽住はすみがやたらめったら日織ひおりにちょっかいを出していたのは、案外クラスで孤立しがちだった日織のことを気にしてくれていたのかも知れない。


「あの……もしかして今回の同窓会の幹事、羽住はすみくんも……?」

 ふとそう思って問い掛けたら「まぁな」とどこか含みを持った感じで笑われた。

 そこで日織はハッとしたのだ。


「私にお知らせの葉書を寄越して下さったのは……」
 ――ひょっとして羽住はすみくんなのですか?

 そう続けようとしたけれど、「ハスミーン、アンタもこっち来て」と玉田の声が掛かって、返事は聞けず終いだった。

 だけど多分きっと。

 羽住はすみは日織が来るから参加したような事を言っていたけれど、きっと来るようなきっかけを与えてくれたのもまた、彼なんだろう。

 会が始まってすぐ、幹事のはずの羽住はすみが、ずっと日織を気にしてそばを離れずにいてくれていたのも、恐らくは自分を気遣ってくれていたのだ。

 そう思い至って、日織は父に連れられて行った羽住はすみ酒造で、兄の一斗いっとと共に自分と一緒にいてくれた、ちょっぴり意地悪な男の子のことを、ほんの少しだけ懐かしく思い出した。



***



 さすがに1クラスだけではなく、中学生当時8クラスあった同級生みんなの集まりだったので、玉田や羽住はすみの他にも、7~8人の世話役がいたみたいだ。

 受け付けをしてくれていた男女や、会を仕切ってくれていたらしい面々が、入り口付近に集まるのを見るとはなしにぼんやり眺めていた日織ひおりは、ふと思い出して鞄の中からスマートフォンを取り出した。


『同窓会、終わられたらお迎えにあがりますので連絡してくださいね?』

 会場入りする前に修太郎しゅうたろうから告げられた言葉を、愛しい気持ちとともに思い出した日織だ。

 今日は土曜日。
 修太郎も公休日で、実は18時前に会場ここまで日織を連れて来たのも彼だった。

 あれから2時間ちょっと。

 腕時計にふと視線を落とすと、20時半になろうかという頃で。

 日織は、(大好きな修太郎さんのことを随分お待たせしてしまったのですっ)と思った。
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