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2.同窓会
それって結構いるってことだろ?
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連絡先に入っているのは、未だに修太郎、両親、義父母、修太郎の弟で元許嫁の健二とその恋人の佳穂、修太郎の腹違いの妹たちである百合子と籐子。そうして幼馴染みの葵咲と、市役所で働いた際お世話になった中本さんの11人だけ。あとはお互いの実家の固定電話くらいで。
ずっと増えなかった電話帳に新しい連絡先が増えるのをちょっぴりくすぐったく感じた日織だ。
でも――。
「あ、あのっ」
久々すぎて、自分の番号の呼び出し方も、相手の番号の登録の仕方も分からなくてドギマギしてしまう。
「ああ、お前もiPhoneか。触ってもいい?」
聞かれて、ふと見ると、羽住が手にしているのも同じリンゴマークのスマートフォンで。
日織のと、大きさとデザインこそ微妙に違えど、きっと使い方はほぼ一緒なんだろう。
「お願いします」
ソワソワしながらロックを解除して羽住に携帯を差し出すと、ササッと操作されて、あっという間に電話帳に「羽住十升 080-xxxx-xxxx」という新たな連絡先が追加された。
「藤原の番号も、もらったから」
羽住のスマートフォンの画面に「藤原日織」の文字を見つけて、小さくうなずいてから、日織は「あっ!」と思う。
「私、もう藤原ではないのですっ。塚田日織なのですっ」
言ったら、「塚田とか言われてもピンとこねぇんだよ。そっちで登録しちまったら、電話帳から呼び出すのに名前思い出せなくて苦労すんだろ」と眉根を寄せられる。
「……でもっ」
それでも「藤原」と登録されてしまうと、修太郎とのご縁を否定されているみたいに思えて、日織は落ち着かないのだ。
「分かったよ。じゃ、これでいいだろ?」
溜め息とともに差し出された画面には「日織」とだけ記されていて。
「下の名前は結婚しようがすまいが変わんねぇだろ? な? 日織!」
とか。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。勝手に呼びかた変えないでくださいっ」
言っても、聞く耳持たずと言った調子で、「藤原って呼ばれんのは嫌なんだろ? で、俺は塚田って呼びたくねぇ。だったら譲歩して日織って呼ぶしかねぇじゃねぇか」と、もっともらしく言われてしまう。
「でも、ダメなのですっ。私を下の名前で呼んでもいいのは修太郎さんとお父様とお母様と……幼馴染みのききちゃんと健二さんと……健二さんの許嫁の佳穂さんと……修太郎さんの妹さんたちとご両親と……それからそれから」
「ん? それって結構いるってことだろ? じゃ、問題ねぇじゃん」
一生懸命言い募ったら逆にニヤリとされて、結局、羽住から「日織」と呼ばれることは決定事項になってしまった――。
ずっと増えなかった電話帳に新しい連絡先が増えるのをちょっぴりくすぐったく感じた日織だ。
でも――。
「あ、あのっ」
久々すぎて、自分の番号の呼び出し方も、相手の番号の登録の仕方も分からなくてドギマギしてしまう。
「ああ、お前もiPhoneか。触ってもいい?」
聞かれて、ふと見ると、羽住が手にしているのも同じリンゴマークのスマートフォンで。
日織のと、大きさとデザインこそ微妙に違えど、きっと使い方はほぼ一緒なんだろう。
「お願いします」
ソワソワしながらロックを解除して羽住に携帯を差し出すと、ササッと操作されて、あっという間に電話帳に「羽住十升 080-xxxx-xxxx」という新たな連絡先が追加された。
「藤原の番号も、もらったから」
羽住のスマートフォンの画面に「藤原日織」の文字を見つけて、小さくうなずいてから、日織は「あっ!」と思う。
「私、もう藤原ではないのですっ。塚田日織なのですっ」
言ったら、「塚田とか言われてもピンとこねぇんだよ。そっちで登録しちまったら、電話帳から呼び出すのに名前思い出せなくて苦労すんだろ」と眉根を寄せられる。
「……でもっ」
それでも「藤原」と登録されてしまうと、修太郎とのご縁を否定されているみたいに思えて、日織は落ち着かないのだ。
「分かったよ。じゃ、これでいいだろ?」
溜め息とともに差し出された画面には「日織」とだけ記されていて。
「下の名前は結婚しようがすまいが変わんねぇだろ? な? 日織!」
とか。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。勝手に呼びかた変えないでくださいっ」
言っても、聞く耳持たずと言った調子で、「藤原って呼ばれんのは嫌なんだろ? で、俺は塚田って呼びたくねぇ。だったら譲歩して日織って呼ぶしかねぇじゃねぇか」と、もっともらしく言われてしまう。
「でも、ダメなのですっ。私を下の名前で呼んでもいいのは修太郎さんとお父様とお母様と……幼馴染みのききちゃんと健二さんと……健二さんの許嫁の佳穂さんと……修太郎さんの妹さんたちとご両親と……それからそれから」
「ん? それって結構いるってことだろ? じゃ、問題ねぇじゃん」
一生懸命言い募ったら逆にニヤリとされて、結局、羽住から「日織」と呼ばれることは決定事項になってしまった――。
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