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2.同窓会

説明するのは難しいのですっ

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「わ、私たち……実はまだ……そのっ、きょ、挙式をしていないので……それで」

 うつむきながら手にしたウーロン茶をひと口含んだら、「は?」と聞き返される。

 挙式と別居との兼ね合いが、羽住はすみの中では結びつかないみたいだ。

「じゃあまだ結婚してねぇってこと? ――いや、でも……名前……」

 胸元の名札をマジマジと見つめられて、日織ひおりは思わずそこを手でギュッと隠した。

 何だか名札の下の胸を見られている気がして落ち着かない気持ちがしたから。

 そんなことはないと分かってはいるのだけれど、修太郎しゅうたろう以外の異性とふたりで話しているという後ろめたさが、日織の心に仄暗い影を落とす。

 会場を見渡せば、同級生たちは皆、思い思いのグループを作ってそのグループごとに盛り上がっているように見える。

 ホテルの大ホールを貸し切っての同窓会は、ドリンクや食事はバイキング形式になっていて、そこから勝手に自分たちの座っている席まで飲食物を持ち運ぶ方式。

 各々に座る席がほぼ固定化されてしまった今となっては、よそのグループに入れてもらうのは困難に見えて。


 気まずさを感じながらも、日織ひおりは会場の隅っこ。

 羽住はすみとともに2人掛けの席に横並びに腰掛けて、ソワソワと視線を彷徨さまよわせる。


「にゅ、入籍はしているのですっ」

 言えば言うほど羽住はすみを混乱させるみたいで、居た堪れない。

 実際、日織自身だって現状に納得がいっていないのだ。
 何故入籍は済ませていて、書類の上では紛れもなく夫婦のはずなのに、自分と修太郎しゅうたろうさんは一緒に住めないのか、と。


「お、お父様がっ。お式が済むまでは一緒に住むことは認めないっておっしゃってらして……」

 ギュッとウーロン茶の入ったグラスを握りしめたら、結露に濡れて、手がひんやりと冷たくなってきた。

「えっと……それって藤原の親父さんがお前と旦那の結婚を快く思ってねぇって事?」

「そっ、そう言うわけではないのですっ!」

 変に誤解されそうになって、慌ててそれを否定したら、羽住はすみに思いっきり眉根を寄せられてしまった。

「せ、説明するのは難しいのですっ」

 モニョモニョと声のトーンを落として「とってもとっても複雑なのです」とつぶやく日織に、羽住はすみが小さく溜め息を落とした。
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