10 / 105
2.同窓会
マスオさん状態?
しおりを挟む
日織が、握られたままの手をもう一方の手で払い除けようとしながら言ったら、「お前ってホント、相変わらず強情だよな」と、日織を握る手に力を込めながら羽住が苦笑した。
***
「――でな、今度俺んトコの蔵と、いくつかの蔵で集まって酒まつりをすることになってさ」
結局あの後、手を離してもらえないままにそばで話すうち、話題が自然日織も好きな日本酒の話になって。
「うちの『波澄』、藤原も飲んだことある?」
蔵の屋号である「羽住」を、文字違いとはいえ商標名に冠したそのお酒は、羽住酒造の看板商品だ。
「私、日本酒は大吟醸が特に好きなんですけど……羽住くんのところの『波澄』はどれも純米吟醸酒なので大吟醸以外も美味しいですっ。先日6割の吟醸酒をいただいたんですけど、キリッとした辛口で、お食事にすごく合いましたっ」
修太郎の言いつけを守って、会場で振る舞われるお酒は飲まないようにして、代わりにソフトドリンクを飲みながら。
バイキング形式になった料理の中からサラダやローストビーフなどを取り分けて食べていたら、羽住に「藤原、お前、酒、飲めねぇの?」と手元のウーロン茶を見つめられた。
「の、飲めないわけではないのです……」
ただ、会場に用意されたアルコールが、ビールやワインやカクテル系ばかりだったから、飲んではいけないと判断しただけ。
そう言ったら「ん? 何だったら飲めるわけ?」と聞かれた。
それで仕方なく「日本酒なら」と答えたら「何だそれ。特異体質かよ!」と驚かれて。「じゃあさ、うちの『波澄』は飲んだことある?」と聞かれたりして、その流れで日本酒談義になったのだ。
***
「私、日本酒だと不思議と酔わないのですっ。でも他のお酒はひと口でも結構……」
それで、「主人から日本酒以外は飲んではいけないよ、と釘を刺されているのです」と話したら、羽住が「主人……」とつぶやいて。
「えっと。ご主人とやらは藤原ん家でマスオさん状態?」
聞かれて「マスオさん?」と彼の顔を見たら「いや、だから……お前んトコの親御さんと同居してんのかなって」と返る。
「あっ。違うのですっ。修太郎さ……、あ、えっと。しゅ、主人はマンションに住んでて……」
「お前は実家なのに?」
即座に言われて日織はモゴモゴと口ごもる。
さっき、話の流れで自分は今も変わらず実家住まいだと言ってしまった手前、一緒に住んでいないことを誤魔化すのが困難に思えた。
***
「――でな、今度俺んトコの蔵と、いくつかの蔵で集まって酒まつりをすることになってさ」
結局あの後、手を離してもらえないままにそばで話すうち、話題が自然日織も好きな日本酒の話になって。
「うちの『波澄』、藤原も飲んだことある?」
蔵の屋号である「羽住」を、文字違いとはいえ商標名に冠したそのお酒は、羽住酒造の看板商品だ。
「私、日本酒は大吟醸が特に好きなんですけど……羽住くんのところの『波澄』はどれも純米吟醸酒なので大吟醸以外も美味しいですっ。先日6割の吟醸酒をいただいたんですけど、キリッとした辛口で、お食事にすごく合いましたっ」
修太郎の言いつけを守って、会場で振る舞われるお酒は飲まないようにして、代わりにソフトドリンクを飲みながら。
バイキング形式になった料理の中からサラダやローストビーフなどを取り分けて食べていたら、羽住に「藤原、お前、酒、飲めねぇの?」と手元のウーロン茶を見つめられた。
「の、飲めないわけではないのです……」
ただ、会場に用意されたアルコールが、ビールやワインやカクテル系ばかりだったから、飲んではいけないと判断しただけ。
そう言ったら「ん? 何だったら飲めるわけ?」と聞かれた。
それで仕方なく「日本酒なら」と答えたら「何だそれ。特異体質かよ!」と驚かれて。「じゃあさ、うちの『波澄』は飲んだことある?」と聞かれたりして、その流れで日本酒談義になったのだ。
***
「私、日本酒だと不思議と酔わないのですっ。でも他のお酒はひと口でも結構……」
それで、「主人から日本酒以外は飲んではいけないよ、と釘を刺されているのです」と話したら、羽住が「主人……」とつぶやいて。
「えっと。ご主人とやらは藤原ん家でマスオさん状態?」
聞かれて「マスオさん?」と彼の顔を見たら「いや、だから……お前んトコの親御さんと同居してんのかなって」と返る。
「あっ。違うのですっ。修太郎さ……、あ、えっと。しゅ、主人はマンションに住んでて……」
「お前は実家なのに?」
即座に言われて日織はモゴモゴと口ごもる。
さっき、話の流れで自分は今も変わらず実家住まいだと言ってしまった手前、一緒に住んでいないことを誤魔化すのが困難に思えた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】【R18短編】その腕の中でいっそ窒息したい
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
私立大学の三年生である辻 朱夏《つじ あやか》は大層な美女である。
しかし、彼女はどんな美形に言い寄られてもなびかない。そんなこともあり、男子学生たちは朱夏のことを『難攻不落』と呼んだ。
だけど、朱夏は実は――ただの初恋拗らせ女子だったのだ。
体育会系ストーカー予備軍男子×筋肉フェチの絶世の美女。両片想いなのにモダモダする二人が成り行きで結ばれるお話。
◇hotランキング入りありがとうございます……!
――
◇初の現代作品です。お手柔らかにお願いします。
◇5~10話で完結する短いお話。
◇掲載先→ムーンライトノベルズ、アルファポリス、エブリスタ
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
【R18】優しい嘘と甘い枷~もう一度あなたと~
イチニ
恋愛
高校三年生の冬。『お嬢様』だった波奈の日常は、両親の死により一変する。
幼なじみで婚約者の彩人と別れなければならなくなった波奈は、どうしても別れる前に、一度だけ想い出が欲しくて、嘘を吐き、彼を騙して一夜をともにする。
六年後、波奈は彩人と再会するのだが……。
※別サイトに投稿していたものに性描写を入れ、ストーリーを少し改変したものになります。性描写のある話には◆マークをつけてます。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる