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1.修太郎さん、まだお話しがっ
それ、ちゃんとご覧になられましたか?
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「修太郎さん、あの……」
恐る恐るといった雰囲気で日織が差し出してきた紙片に、修太郎は外していた眼鏡をかけた。
別に老眼ではないので裸眼でも近くの書類なら見えるのだけれど、何となくの癖というやつだ。
先程まで一緒のベッドで眠っていたはずの日織なのに、いつの間に身支度を整えたのだろう。
眼鏡をかけたついでにクリアになった視界で愛する妻を見つめれば、
「あ、あのっ、見ていただきたいのはこっちなのですっ」
恥ずかしそうにモジモジした日織に手にしていた葉書を押し付けられた。
「どうして? 僕のシャツを羽織った日織さん、すごく愛らしいのに」
週末の今日。
とあるイベントに合わせて、日織は久々に修太郎のマンションに泊まりに来ている。
2月の半ば。
少しずつ少しずつ春に向かって準備を進めているみたいに、日中時折日差しが温む日もあるのだけれど、基本的にはまだまだ寒さが厳しい折り。
いつもならフワフワモコモコの愛らしいパジャマを用意している日織なのだけれど、あいにくそれは昨夜修太郎がいたずらをしてダメにしてしまった。
というのも。
「こ、これはっ、仕方なくですっ! 修太郎さんがあんなことなさるから……パジャマもっ。宝石みたいに綺麗なバレンタインチョコも台無しだったのですっ」
日織がフワモコパジャマを諦めなくてはならなくなった理由は正にそれで。
「そんな台無しとか。今年は手作りじゃないって日織さんがしょげていらっしゃるから。ほんの一手間かけましょうかって提案しただけですよ?」
しれっと「日織のせいでもある」と言外に含めながら意地悪くそう言って、修太郎がクスクス笑う。
「しゅ、修太郎さんは意地悪なのですっ!」
ぷぅっと頬を膨らませる様がまた可愛くて、修太郎は次はどんなことをしてあの可愛い唇をとがらせようか?と思ってしまう。
なのに。
「手の、ちゃんとご覧になられましたか?」
悔しさを紛らわせるように日織にキッと睨みつけられて、修太郎はああ、そうだった、と先程眼前に突きつけられた際、無意識に受け取ってしまった葉書に視線を落とす。
「……同窓会?」
四角い紙片につらつらとパソコンで味気なく印字された文字を目で追えば、そんな文言が目について。
「はい。みんな二十歳を過ぎましたし……お酒でも飲みながらワイワイやろう、みたいなお話になったみたいです」
短大2年生の時に参加した成人式で、そんな話が上がっていたらしい。
「あれからだいぶ経ちますし、立ち消えたんだと思ってました。まさか本当に音頭を取ってくれる方がいらしたなんて驚きなのです」
言って、修太郎の座るベッドに片膝をつくようにして身を乗り出した日織だったけれど。
恐る恐るといった雰囲気で日織が差し出してきた紙片に、修太郎は外していた眼鏡をかけた。
別に老眼ではないので裸眼でも近くの書類なら見えるのだけれど、何となくの癖というやつだ。
先程まで一緒のベッドで眠っていたはずの日織なのに、いつの間に身支度を整えたのだろう。
眼鏡をかけたついでにクリアになった視界で愛する妻を見つめれば、
「あ、あのっ、見ていただきたいのはこっちなのですっ」
恥ずかしそうにモジモジした日織に手にしていた葉書を押し付けられた。
「どうして? 僕のシャツを羽織った日織さん、すごく愛らしいのに」
週末の今日。
とあるイベントに合わせて、日織は久々に修太郎のマンションに泊まりに来ている。
2月の半ば。
少しずつ少しずつ春に向かって準備を進めているみたいに、日中時折日差しが温む日もあるのだけれど、基本的にはまだまだ寒さが厳しい折り。
いつもならフワフワモコモコの愛らしいパジャマを用意している日織なのだけれど、あいにくそれは昨夜修太郎がいたずらをしてダメにしてしまった。
というのも。
「こ、これはっ、仕方なくですっ! 修太郎さんがあんなことなさるから……パジャマもっ。宝石みたいに綺麗なバレンタインチョコも台無しだったのですっ」
日織がフワモコパジャマを諦めなくてはならなくなった理由は正にそれで。
「そんな台無しとか。今年は手作りじゃないって日織さんがしょげていらっしゃるから。ほんの一手間かけましょうかって提案しただけですよ?」
しれっと「日織のせいでもある」と言外に含めながら意地悪くそう言って、修太郎がクスクス笑う。
「しゅ、修太郎さんは意地悪なのですっ!」
ぷぅっと頬を膨らませる様がまた可愛くて、修太郎は次はどんなことをしてあの可愛い唇をとがらせようか?と思ってしまう。
なのに。
「手の、ちゃんとご覧になられましたか?」
悔しさを紛らわせるように日織にキッと睨みつけられて、修太郎はああ、そうだった、と先程眼前に突きつけられた際、無意識に受け取ってしまった葉書に視線を落とす。
「……同窓会?」
四角い紙片につらつらとパソコンで味気なく印字された文字を目で追えば、そんな文言が目について。
「はい。みんな二十歳を過ぎましたし……お酒でも飲みながらワイワイやろう、みたいなお話になったみたいです」
短大2年生の時に参加した成人式で、そんな話が上がっていたらしい。
「あれからだいぶ経ちますし、立ち消えたんだと思ってました。まさか本当に音頭を取ってくれる方がいらしたなんて驚きなのです」
言って、修太郎の座るベッドに片膝をつくようにして身を乗り出した日織だったけれど。
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