【完結】【R18】叶わぬ恋だと分かっていても

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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あのとき私が彼の求めに応じていたら、という不毛な想い

あの日感じた違和感の正体

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 ここまでの道すがら、雨がポツポツとフロントガラスを濡らし始めて……。気が付けば、今では結構な雨量。

 外で話すのはもちろんのこと、葬祭会館の中で話すのもおかしいよねということで、なっちゃんの車の中で話をすることにした。


 初めまして、というありきたりなあいさつの後、ショートボブに髪の毛を切りそろえた細身のなっちゃんが、私に恐る恐る切り出した。

「私も……なおさんとお付き合いさせて頂いていました」

 私は小さくて少しぷにっとした印象のセミロングで、可愛い系だとよく言われる。

 対してなっちゃんは、スレンダーでシャープな印象のキャリアウーマンタイプ。

 全然雰囲気の違う私たちに、どうしてなおちゃんは手を出したんだろう?


 なっちゃんとなおちゃんの出会いは、なっちゃんがなおちゃんの勤めるごみ処理場第一工場へ嘱託職員として配属されたことが切っ掛けらしい。

 私より四つ年下のなっちゃんは、十八歳の時に結婚をして、二人の男の子にも恵まれていると言う。

 子供の年齢こそとお以上離れているとはいえ、なおちゃんも二人の男の子の父親ということで、最初は子育てなんかの相談に乗ってもらっていたらしい。


 それが男女の関係に発展したのは、どうやら私のお母さんが病気になって、なおちゃんと会える機会がガクッと減った辺りかららしかった。


「下の子がね、ミニーのミニカが好きで。誕生日に可愛い猫の描かれたラッピングカーのミニカを欲しがって。なおさんには関係ないことなのに一緒に色々探し回ってくれる姿が本当に素敵に見えて」

 なっちゃんの旦那さんは「車のおもちゃなんて何だっていいじゃん。適当に誤魔化せよ」と言って取り合ってくれなかったらしい。

 なおちゃんはそれを、一緒になって色々探してくれたんだとか。

 私はそこで、母の病気でずっと会えなかったとき、久々のデートで彼と一緒にくだんのミニカを探したことを思い出した。

(そっか、あれ、なっちゃんの子供さんのためだったんだ……)

 ――あの日感じた違和感の正体はこれだったのね。

 一緒にいた時にも、なおちゃんの心の中には既に別の女性がいたんだと思うと、何だかモヤモヤとした気持ちがくすぶって。

「ごめんなさい。こんな話聞かされてもイヤですよね。……私、実はなおさんから『俺には菜乃香なのかっていう大事な彼女がいる。菜乃香から連絡が入ったらそっちを優先するからそこだけは覚えておいて?』ってずっと言われてて。菜乃香さんのことは彼と付き合う前から知っていたんです。なおさん、菜乃香さんのこと、私に色々話してくれてたので。……それで勝手に菜乃香さんのこと、かなり前からの知り合いみたいに思ってて……。菜乃香さんからしたら私の存在なんて知らなかったでしょうし、ご迷惑なお話でしたよね」
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