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母との別れと、なおちゃんからのSOS

五度目の着信

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 いつもなら未登録の番号からの複数回の着信は一旦保留にしてから、Webサイトなどで迷惑電話に指定されている番号ではないかだけ確認して、違うようならこちらから再度掛け直してみることにしている。

 でも――。

 昨日なおちゃんからの着信を拒否設定にしたばかりの私は、見知らぬ番号からの電話を警戒して何もアクションを起こせずにいたのだ。

 とはいえ、こう何度も掛かってくるところを見ると無視し続けるのもどうかなと迷って。

「それは……掛け直した方が良くない? 知り合いの誰かが番号を変えただけかも知れないよ?」

 さすがにたっくんもそう思ったみたい。

 昨日の事情を知らないたっくんからしたら、どうしてこんなに何度も掛かっているのに掛け直さないのか不思議なんだろうな。

「うん、私もそう思う。……でも」

 私は迷った末、たっくんに昨夕なおちゃんから着信があって会いたいと言われたこと、それを断ったのを機になおちゃんの番号を着信拒否したことなどを軽く説明してから、この見知らぬ番号からの着信を警戒しているのだと付け加えた。

「そっか……。そういう事情なら菜乃香なのかが慎重になるのも分かるな。……僕もその話を聞いたら安易に掛け直してみなよって言うの、ちょっと戸惑うし」

 たっくんの言葉はもっともだと思う。

 私は「ごめんね」と要らない心配をかけたことを謝ってから、スマートフォンを再度机上に戻した。

 だけどそれと同時、またしてもくだんの番号から五度目の着信が入ってきて――。

 出るべきか否か。
 迷いに眉根を寄せてたっくんの方を見たら、「とりあえず出てみたら?」と、どこか不安そうな顔で言ってくれた。

 私は彼の言葉に小さくうなずくと、たっくんの気持ちが少しでも晴れたらいいなと思って、スピーカー通話で応答することにした。

 もしなおちゃん絡みじゃなければスピーカー通話を辞めたらいよね?

 そう思って。


***


「もしもし?」

 恐る恐る通話に応じたら、向こうでホッとしたような吐息が聞こえた。

 そうしてガサガサと言う衣擦れの音。

 あとは鼻をすするかすかな気配。

(もしかして、電話の先の人、泣いてる?)

 そんなふうに思ったけれど、何故先方さんがそんな状態で私に電話してくるのかがさっぱり分からなかった。


『……ご、ごめ、なさい。何度も電話してしまって。私、古田ふるた夏美なつみと言、います。戸倉とくら……菜乃香なのかさ、んの番号でお間違いな、いでしょうか』

 合間合間でグシュグシュと鼻をすすりながら、見知らぬ女性がそう名乗って。

 私はたっくんと顔を見合わせて予想外の展開にキョトンとした。
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