上 下
99 / 120
*梅雨の長雨―恋慕―

僕も菜乃香を気持ちよくしてあげたい

しおりを挟む
「んっ……、なの、ちゃ……お願い。もっ、らさないで……っ?」

 数回それを繰り返したら、たっくんがとうとう観念したみたいにそう告げてきた。

くわえて……欲しい?」

 分かっていてわざと言葉にして確認したら、たっくんがコクコクと必死な様子でうなずいた。

(この人は、なんて可愛いんだろう!)

 私はその時を待っていたみたいにチュプッと水音を立てて、唾液をたっぷり溜めた口中へたっくんの熱を迎え入れた。

 自分でしたくせに、熱くたぎったくいに喉の奥を刺激された私は涙目になって、思わず苦し気な吐息を漏らす。

「ぁ、……んんっ」

 なおちゃんとの時には、私、自分からこんなに奥の方まで男性のモノをくわえ込んだことはないかも知れない。

 なおちゃんに頭を押さえ付けられて吐きそうなくらい苦しかったことは何度かあるけれど、いま私の頭頂部に添えられたたっくんの手は、別に私の頭を押さえたりはしていない。

 むしろそうしてはいけないと思っているみたいに、ギュッと私の髪の毛をかき乱すように手指に力が込められているのがたっくんの精いっぱいの優しさに思えて……。
 それが嬉しくてたまらないの。


***


「あっ、なのちゃ、ダメだ。放し……っ」

 でればでるだけ、口の中でたっくんがビクビク脈打つみたいに反応してくれるのが嬉しくて。
 夢中でご奉仕していたら、不意にたっくんが切なげな声を上げて、慌てたように私の身体を引き剥がした。

 チュポッと塗れた音を立てて抜き取られた雄芯が、フルリと目の前で揺れる。

「……たっくん?」

 もしかして、痛かったのかな?

 そのまま口の中で達してくれても構わないと思っていた私は、没頭するあまり粗相をしてしまったんだろうか?と不安になって彼を見上げた。

 と、どこか申し訳なさそうな表情のたっくんに、「あ、あのさ……。このまま口で、は寂しいなって思って……」

 もちろんそれも悪くはないと思うんだけど、とゴニョゴニョと歯切れの悪い物言いをしながらも、「それに……」とたっくんが付け加える。

「それに、その……ぼ、僕も……菜乃香なのかを気持ちよくしてあげたいって思うんだけど……ダメ、かな? って言うか正直に暴露するね。――僕も……、めちゃくちゃ菜乃香に触れたくてたまらないんだ!」

 初めて身体を重ねる時くらい、私に触れて、それからちゃんと繋がってから一緒に果てたい……と、たっくんが私をうかがうように見やって。

 そうしてハッとしたように自分の脚に視線を落としてから、申し訳なさそうに付け加える。

「って言っても僕は今、このザマだ。……思うように動けないかもしれないんだけど」

 しゅん、と項垂うなだれるたっくんに、私は慌てて口走らずにはいられなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

同期の御曹司様は浮気がお嫌い

秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!? 不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。 「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」 強引に同居が始まって甘やかされています。 人生ボロボロOL × 財閥御曹司 甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。 「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」 表紙イラスト ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl

婚約者

詩織
恋愛
婚約して1ヶ月、彼は行方不明になった。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。

如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。 父からの遺言書を持って。 そこに書かれてあったのは、 『会社は片倉に託すこと』 そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。 政略結婚、そう思っていたけれど……。 浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。 けれど、片倉は……? 宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) ※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。 素敵なイラストをありがとうございます。

処理中です...