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久々のデート

モヤモヤとした不安

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 結局「えっと……」と不自然に言いさしたまま黙り込んでしまった私に、電話口でお母さんが小さく吐息を落として。

 私はそれだけで、何もかも見透かされているみたいな気持ちになって、ソワソワと落ち着かなくなってしまう。


『――なのちゃん、今どこにいるのかはお母さんにも分からないけど……とりあえず病院に戻って来られないかな? お母さん、なのちゃんに会って話したいことがあるの』

 ややして母からそう提案された私は、「分かった」と言うことしか出来なかった。


***


「ごめんなさい、なおちゃん。私、病院に戻らなきゃいけなくなった……」

 通話を終えるなりなおちゃんに向き直ってそう言ったら、スマートフォンを下に降ろしたなおちゃんが、「分かったよ」とやけにあっさり返してきた。

 私が彼に背中を向けて通話している間に、なおちゃんがコソコソと(?)携帯をいじっていたことに、私は妙な胸騒ぎを覚えてしまう。

(考えすぎ、だよね?)

 実際、手持無沙汰てもちぶさたな時にスマートフォンをいじるだなんて、よくある話だ。

 自分がなおちゃんの立場でもきっと、時間つぶしにスマホを見てしまっていたと思うし。

 でも――。

 なおちゃんが立ち上げていた画面がチラリと見えてしまった私は……それがメッセージアプリだったことに気が付いてしまっていたから。

(私と一緒にいるのに……誰とやり取りていたの?)

 自分のことを棚に上げてそう思ってしまった。

 もちろん、奥様という可能性だってあるはずだ。

 なのに――。

 垣間見えた画面に、やたら可愛いスタンプがひしめき合っているように見えたことに、心の中にポツンと一滴墨汁ぼくじゅうを落としたみたいなモヤモヤが広がっていくのを止められないの。

 加えて、つい今し方まで私を抱きたいと熱い視線を送っていたなおちゃんが、やけにアッサリ引き下がってくれたことも、不安に追い打ちをかけてきた。

(ねぇ、菜乃香なのか。貴女、バカなの? 病気で入院中の家族からの呼び出しに、ぐちぐちと難癖つける方が問題あるでしょ)

 そう考えて動揺する気持ちを否定してみたものの、すぐに(でも……その電話はさっき話したタツ兄の携帯電話から掛かってきてたんだよ? 何で気にしてくれないの?)と思ってしまって。

 打ち消しても打ち消しても何故かおりのように鬱々うつうつとした気持ちが心の中にわだかまって……私は気持ちが沈んでいくのを感じずにはいられなかった。

 ――ねぇなおちゃん、『そんなの菜乃香の杞憂きゆうだよ』って笑い飛ばして? お願いだから。
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