【完結】【R18】叶わぬ恋だと分かっていても

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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*母からの留守電

胸騒ぎ

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「――こんな風に菜乃香なのかを朝も昼も夜も考えずに抱くことが出来るなんてすごく贅沢だと思わない?」

 いつもなら、どんなに激しく求め合って気怠く疲れ果てたとしても、なおちゃんは奥さんとお子さんが待つ家に帰らなければならない。

 それを考えなくていいというのは、制約の中でしかお互いを愛することのできない私たちにとって、確かにとても贅沢な時間に思えた。


「私も――」

 同じ気持ちだよ、って答えようとしたら、まるでそのタイミングを見計らったみたいに、なおちゃんが赤くぷっくり膨らんだ私の陰核と、ずっと勃ち上がりっぱなしの乳首を指の腹で優しく押しつぶすように可愛がってきて。

「やぁ、んっ。ダメぇっ。いま、そ……んなことされたら、私またっ――」

「何度でもイけよ」

 なおちゃんの甘くかすれた声にそそのかされるように、私の身体はビクッと跳ねて、目の前が真っ白に染まった。

 何度もイかされた身体は、ほんの少しの刺激で、いとも簡単に昇り詰めてしまえるんだって思って。


「なおちゃ、もぉ、ホントに……」

 無理ぃっ……と言いながら、私はビクビクと身体を震わせた。


***


 家に帰る車中で、そんな博多でのあれこれを思い出した私は、それだけで下腹部がトロリと濡れてくるのを感じた。

 私はなおちゃんとの情事に、どれだけ毒されているんだろう。

 後部シートにケージごとシートベルトを掛けて乗せている直太朗が、ミラー越し、そんな私をつぶらな瞳でじっと見つめてきて。その視線が物凄く非難めいて感じられた私は、慌ててミラーから視線を逸らした。


***


『なのちゃん、仕事が終わったらうちに来なさい。いいわね?』

 翌日、気怠い身体に鞭打って仕事を終えて、ロッカーから携帯を取り出してみると、お母さんから留守電が入っていた。

 どこか有無を言わせぬ雰囲気をまとった固い口調のその声音に、私は嫌な予感を覚える。

(何だろう)

 思いながらも、お母さんに「何の用?」と折り返す勇気もないままに、ギュッと電話を握りしめて――。


「あ、なおちゃんに――」

 夕方実家に行かないといけないとなると、今日はなおちゃんに会えない。

 ちゃんと連絡しないとって思って、なおちゃんに電話をかけたらすぐに応答してくれた。

『どうしたの?』

 なおちゃんの優しい声音に、今すぐ会いたいという気持ちが込み上げる。

 でも今日は――。


「ごめん。なおちゃん。お母さんから呼び出しがかかっちゃって。今日は会えそうにないの」

 言ったら、少し沈黙があった後、『……そっか』と少し残念そうな声が返った。

『ねぇ菜乃香なのか。昨日、旅行から帰った後、実家に寄らなかったの?』

 当然のように聞かれて、私は見えないと分かっていながらも、フルフルと首を横に振りながら「行ったよ。お土産もちゃんと渡して直太朗も連れて帰ってきた」と答えた。

 なおちゃんと話しながら、心の中、昨日顔を見せたばかりなのにホント何の用だろう?って、胸騒ぎが止められなかった。
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