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*食欲よりも強く
妬きもちを妬く資格すらない
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ヒクヒク呼吸を乱しながら言葉を紡いだら、「分かったからもう喋んな」って背中をトントンと優しく撫でられた。
***
なおちゃんと一緒にタクシーに乗って着いた先は、ビジネスホテルの一室で。
「さすがにさ、役所が取ってくれた部屋にお前連れ込むわけにゃいかねぇから……別に部屋取った」
研修自体は今日の夕刻までだったから、研修の終了と同時にその足で地元に帰る人間と、今夜もう一晩だけ過ごして観光を楽しんでから帰る面々とに別れたみたい。
私を呼び寄せるために直帰組に加わらなかった手前、ホテルの部屋はチェックアウトせずにそのまま残したなおちゃんだったけれど、厳密にいうと帰らないことを選択した職員の今夜以降の宿泊費自体は個人負担なんだとか。
まぁ、だからといって、そのままその部屋に私を連れ込むのは、さすがになおちゃんでも憚られたらしい。
私のためになおちゃんが新しく取ってくれた部屋は、同じホテル内でも階が違うから、なおちゃんが私の部屋を訪ねても、居残り組の人たちと鉢合わせる可能性は低いみたい。
エレベーターなどで一緒になる危険性もないわけじゃいけれど、幸い残った面々は他部署の人ばかり。
かつて束の間市役所にいた私の顔を知らない人たちだから、出会ったとしても何とかなるだろって言われて。
なおちゃんの、そういう物怖じしないどこか堂々とした言動の端々に、〝浮気慣れ〟の様なものを感じて、私はふと切なくなるの。
だけど、そんな私だって奥様やお子さんからしたら〝浮気相手〟以外の何ものでもないから。
こんな風に妬きもちを妬く資格すら、きっとないんだと思う。
***
「菜乃香?」
いつの間にか部屋に着いていたみたいで、なおちゃんがフロントで受け取ったカードキーで部屋の扉を開錠して、怪訝そうな様子で私を振り返る。
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
考え事をしていたせいで、気付かないうちになおちゃんから数歩分遅れを取ってしまっていた私は、急いで彼の横に並んで。
なおちゃんにそっと背中を押される様にして部屋に入った。
それと同時――。
荷物を床に置いたなおちゃんに、我慢できないみたいにギュッと抱きしめられた。
***
なおちゃんと一緒にタクシーに乗って着いた先は、ビジネスホテルの一室で。
「さすがにさ、役所が取ってくれた部屋にお前連れ込むわけにゃいかねぇから……別に部屋取った」
研修自体は今日の夕刻までだったから、研修の終了と同時にその足で地元に帰る人間と、今夜もう一晩だけ過ごして観光を楽しんでから帰る面々とに別れたみたい。
私を呼び寄せるために直帰組に加わらなかった手前、ホテルの部屋はチェックアウトせずにそのまま残したなおちゃんだったけれど、厳密にいうと帰らないことを選択した職員の今夜以降の宿泊費自体は個人負担なんだとか。
まぁ、だからといって、そのままその部屋に私を連れ込むのは、さすがになおちゃんでも憚られたらしい。
私のためになおちゃんが新しく取ってくれた部屋は、同じホテル内でも階が違うから、なおちゃんが私の部屋を訪ねても、居残り組の人たちと鉢合わせる可能性は低いみたい。
エレベーターなどで一緒になる危険性もないわけじゃいけれど、幸い残った面々は他部署の人ばかり。
かつて束の間市役所にいた私の顔を知らない人たちだから、出会ったとしても何とかなるだろって言われて。
なおちゃんの、そういう物怖じしないどこか堂々とした言動の端々に、〝浮気慣れ〟の様なものを感じて、私はふと切なくなるの。
だけど、そんな私だって奥様やお子さんからしたら〝浮気相手〟以外の何ものでもないから。
こんな風に妬きもちを妬く資格すら、きっとないんだと思う。
***
「菜乃香?」
いつの間にか部屋に着いていたみたいで、なおちゃんがフロントで受け取ったカードキーで部屋の扉を開錠して、怪訝そうな様子で私を振り返る。
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
考え事をしていたせいで、気付かないうちになおちゃんから数歩分遅れを取ってしまっていた私は、急いで彼の横に並んで。
なおちゃんにそっと背中を押される様にして部屋に入った。
それと同時――。
荷物を床に置いたなおちゃんに、我慢できないみたいにギュッと抱きしめられた。
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