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消えない印

俺にピアスの穴、開けさせて?

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「んっ」

 口の中を掻き回すように舐められて、意識がそちらへいきかけるたび、耳をギュッと挟まれて。

「や、っ」

 鈍い痛みに小さく吐息が漏れる。

「キスマークはさ……」

 唇から首筋に降りてきたなおちゃんの口付けが、髪の毛で隠れるであろうギリギリのラインにチュッと吸い付いて赤い鬱血の跡を刻んだ。



 そうしながらも、耳をいじる手は離してくれなくて。


 何度もなおちゃんに力強く挟まれた耳たぶはジンジンとした疼痛と熱っぽさを訴えている。

「どんなに頑張って付けても……数日経ったら消えちゃうだろ?」

 それでもなおちゃんから付けられたアザは、消え切る前に次のものを散らされるから、私の肌はずっとどこかしらに赤い花びらが舞い飛んでいるの。

「ん。だからなおちゃん、毎日新しいのつける、の?」

 左の鎖骨のあたりにチクッとした痛みを感じて、そこにも新たなアザが刻まれたことを知る。


「そう。これは菜乃香なのかは俺のものって印だからね」

 消えないようにしないといけないのだ、となおちゃんが微笑んだ。

 なおちゃんはとっても独占欲が強い。

 言動の端々にそれを感じさせられることが、怖いのと同時に心地よくもあって。

 私は全身全霊でこの人に支配されたいのだと思ってしまう。


「だから、さ。ちょっとやそっとじゃ消えない印を俺は菜乃香なのかの体に刻み込みたいんだ」

 いつのまにか耳元に移動していた唇で、耳朶をそっとむようにした後、一瞬だけそこに噛みつかれた。

「いっ!」

 指で挟まれた時とさ比べ物にならない痛みがピリッと耳に走って、私は思わず涙目で悲鳴を上げた。

「ねぇ、菜乃香なのか。俺にピアスの穴、開けさせて?」

 ジンジンと痛む耳たぶをやんわり舐め上げながら、なおちゃんが私にそう強請ねだる。

 彼に支配されたいとそう願ってしまう私には、なおちゃんからの要求を断ることは出来ないの。

 私はなおちゃんをじっと見上げて小さくコクン、とうなずいた。
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