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新居探し

あれこれ援助させてもらってもバチはあたらない

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 なおちゃんが私の心配なんて知らぬげに、不動産屋さんとどんどん話を進めてしまうから……私は内心そわそわと焦ってしまった。

 あれこれ思い浮かべていたらさすがに少し不安になって、「ちょっと待って欲しい」と彼の作業服のすそを引っ張ったら、「初期費用や当面必要な物なんかは俺が何とかするから気にするな。菜乃香なのかは月々の家賃のことだけ考えていればいいよ」と頭を撫でられる。


「でっ、でもっ」

 それではなおちゃんに負担がかかりすぎてしまう。

 そう思って眉根を寄せたら、「ちょっと失礼」となおちゃんが不動産屋さんに声を掛けて、私を店外に連れ出した。



***



「なおちゃん……?」

 何が何だか分からないうちに彼に手を引かれて付いてきた私は、不安になって恐る恐るなおちゃんを見上げる。

 なおちゃんは私の方へ少し身を屈めると、「菜乃香なのかが一人暮らし始めたいのって、俺のためでもあるんだろう?」って耳打ちしてきて。

 私はそんなことなおちゃんには一言も言っていなかったから驚いてしまう。


「なっ、なんでそのこと……」

 思わず言ったら、「やっぱりな」ってニヤリとされて。
 私は彼にカマをかけられたんだと理解した。

「いつも車の中で、ばっかだったもんな。毎度ホテルっていうのも菜乃香なのかが恥ずかしいだろうと思って誘えなかったけど……お前が一人暮らしを始めてくれたら、そういうの全部解決出来るんだよな」

 そっと優しく頭を撫でられて、「そんなトコまで菜乃香なのかに心配させて悪かったな」と謝られた。

 私は何も言わなくてもなおちゃんが察してくれたことが嬉しくて、ふるふると首を振る。

「私こそ……なおちゃんに何も相談しなくてごめんね」

 言ったら、「確かに寂しいって思ったけど……そこが菜乃香なのからしくもあんだよ」と微笑まれた。

「だったら尚更、だ。菜乃香なのかのアパートは俺の家にもなるわけだし、あれこれ援助させてもらってもバチはあたらないと思うんだけど」

 ――な?と畳みかけられて、私は恐る恐る「ありがとう」とうなずいた。


 なおちゃんはそんな風に言ってくれたけれど、頼るのは最初だけにしよう。

 月々のお家賃については、自分で何とかやりくりする。

 店内に戻って行くなおちゃんの後ろ姿を見るとはなしに眺めて付き従いながら、私はそんなことを思った。
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