【完結】【R18】叶わぬ恋だと分かっていても

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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新居探し

不動産屋巡り

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 新しい職場に移って3ヶ月。

 お給料は日給月給制で、休んだりしない限りは一定額の月額報酬がもらえる。
 今はまだないけれど、有給休暇がつくようになれば、休んでもお給料に響かなくなる。

 月々のお金の入りが大体把握出来たと感じた私は、両親に実家を出て一人暮らしを始めたい旨を打診した。

 元々無駄を嫌う堅実な姉と違って、損得度外視で、一度言い出したら聞かないところのある娘だったからか、両親は「人様に迷惑をかけないこと」「困ったことがあったら包み隠さず親に相談すること」を条件に家を出るのを許可してくれた。

 賃貸契約の際には「わしが保証人になってやるから」という父からの言葉に、私は「お父さん有難う」とお礼を言いながら、「家を出たい理由が不純でごめんなさい」と心の中で謝罪した。


***


 アパートを探すことを決めてからは、仕事後、今までのようになおちゃんと実家近くのスーパーに集合するのをやめた。

 ここ1週間ほどは、昔私が市役所で働いていた頃にふたりで昼休みを共に過ごした、なおちゃんの借りている庁舎近くの月極つきぎめ駐車場で落ち合っている。


 いつもなら、会うなりなおちゃんの車に移動してイチャイチャするところだけれど、ここ数日はなおちゃんが私の愛車に移動してきていて。

 私は助手席に座り直して、なおちゃんの運転で市内の不動産屋さんを巡る毎日。

 なおちゃんは市役所の職員さんだけあって、市内のこと――特に地区ごとの治安の良し悪し――に詳しい。
 若い女の子が1人で暮らすならこことここは避けたほうがいい、逆にこの辺りはお勧め……など、私が知らないことをあれこれ教えてくれて。

 不動産屋さんの方が、彼の知識に舌を巻いていたくらい。


 お金さえ気にしなければ、セキュリティ面でも安心できる物件を借りることが出来るのだろうけれど、現実問題私が稼げる給料の中で、賃料に充てられる金額は5万円以内が関の山だった。

 だから、せめて立地でぐらいは少しでも不安要素を減らしておくべきだと考えたみたい。
 そういうところ、やはりなおちゃんは年上の男性なんだなという感じがして、とても頼り甲斐があった。


 田舎なので贅沢を言わなければ、4万円程度の家賃でも、2LDKの物件が結構あって。
 けれど、私には車もあるので駐車料金が別途発生することを考えると、賃料の上限は5万円から駐車料金や共益費などを差し引いた額で探さないといけない。


 いくつかの不動産屋さんを回った結果、私が選んだのは市役所まで徒歩15分くらいの地区にある、山際の小さなアパートで。
 鉄筋構造の2階建てで、1フロアに2世帯ずつ入れる、2LDKの築年数が結構経った古いアパートだった。
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