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*転職を機に

菜乃香、何を考えているの?

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 なおちゃんは、奥さんには家族としての情のみで、男女としての恋愛感情はないって言うけれど、それはなおちゃんの一方的な言葉に過ぎないって私、分かっているの。

 なおちゃんにそのつもりがないからと言って、奥さんも彼に対して恋愛感情がないとは限らない。
 そう気付いていながら、そこからあえて目をそらすように妻帯者と一緒にいるんだもの。

 私だって、十分に罪深い。


 それに――。


 なおちゃんだって私の前ではそんな風に言っているけれど、家に帰ったら奥さんに「愛してるよ」ってささやいてるかも知れないもの。


 そういう諸々を百も承知で、気付かないふりをして自分の気持ちも誤魔化して。

 それだけならまだしも、あわよくばなおちゃんの奥さんの座におさまることができないかしらと夢見てしまうことさえあるのだ。


 あえて見ないようにしているけれど、それはなおちゃんの家庭を壊すことなくしては起こり得ない、最低な望み。



***



菜乃香なのか、何を考えているの?」

 気が付けば、なおちゃんが私の制服のベストの前を全開にして、その下のブラウスのボタンも半分以上外した後で。

 ブラの肩紐をズラすようにして乳房に口付けながら、上目遣いでそう問いかけてくるの。


「か、い社のこと、とかっ、思い出して、たっ」

 声を出そうとするたびに胸の膨らみをやんわり包み込むように押し上げられて。
 ブラの布地が敏感なところに時折こすれて思わず声が震えてしまう。

「会社のことって……いい男でもいた?」

 その言葉と同時、皮膚にチクリとした痛みが走る。

「やんっ、痛い、なおちゃんっ」

 いつもより強めに吸い上げられた皮膚は、赤紫に鬱血して、しばらくは消えそうになくて。

 転職したばかりで落ち着かないから、私はまだアパート探しすら始めていない。

 もう少し落ち着くまでは、両親たちと実家住まいの身。

 両親だって20歳はたちを超えた娘がお風呂に入っているとき、わざわざ覗きにくるようなことはないけれど、それでも脱衣所にいる時などに、不意にお母さんに扉を開けられて話しかけられることはある。

 だからキスマークをつけられるたび、私、ソワソワさせられるの。
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