【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
348 / 366
43.幸せの具現化

いてくれるといいな

しおりを挟む
(言われてみたら今月の予定日っていつだった……?)

 仕事を辞めてからあまり手に取らなくなってしまっていた手帳をいそいそと開いてみたら、予定日を二週間以上も過ぎてしまっていることに今更のように気が付いて。

「あ、あの……宗親むねちかさん……私……」

 私の表情ですべてを悟ったらしい宗親さんが、

「検査薬買ってきます」

 腕時計にちらりと視線を落としてから、そうおっしゃって玄関にきびすを返した。

 近所のドラッグストアは十九時しちじ閉店。今はまだ十八時半ろくじはん過ぎだから、急げばきっと間に合うはず。





 クリスマスイヴ。
 プレゼントに香水をお渡しした私をお風呂場で愛してくださった宗親さんは、超高級ホテルのスイートルームでも、まるでその延長みたいに明け方まで何度も何度も求めてくださって。
 気が付けば私、足腰が立たなくなるほどになってしまったのだけれど。

 考えてみたらあの日以来、宗親さんは私との行為に避妊なんてしていなかったのだ。

 情交の後、膣内なかからトロリと溢れ出てくる温かな感触にも、今やすっかり慣れっこになってしまっていた。

 そんなだったのに。

 自分自身妊娠の可能性にもっと早く気付くべきだったと、己の不甲斐なさに呆れながらそっと下腹部を撫でる。

(赤ちゃん。いてくれるといいな)

 触れる手のひらに、ありったけの願いを込めた。



***



春凪はなさん、いらっしゃるー?」

 宗親さんが検査薬を買ってきてくださって、夫婦二人して検査結果に固唾かたずを呑んだあの日からずっと。

 『オリタ』で秘書をやっている宗親さんの妹・夏凪かなさんが、夕方にちょいちょいマンションに遊びに来てくださるようになった。

 きっと帰りが遅くなりがちな宗親さんが、私を気遣って夏凪さんに訪問をお願いしているんだろう。

 イマイチ体調がかんばしくなくて、外出できずに家に一人でいることが多かった私は、それでも気晴らしに誰かと話せるのは嬉しくて。

 夏凪さんの訪問に、実はすごく助けられている。


「飴なんかは平気でしたわよね?」

「そんなに数は食べられないですけど……ちょっと口に含むぐらいなら」

 夏凪かなさんが渡して下さったのは、飴ではなくて京都の方の有名な老舗しにせのカラフルな金平糖だった。

「本当にしんどそうですけれど……ちゃんと食べるもの、口に出来てますの?」

 差し出された高級そうなふた付き陶器に入った金平糖をひとつつまんで口に入れたところで夏凪さんから心配そうに眉根を寄せられて、私は咄嗟とっさにうまく返せなくて淡い笑みを返した。

 夏凪さんに心配されるのも無理はない。
 このところまともに固形物を口に出来ていないからか、私は自分でも分かるぐらいやつれてしまっている。

 優しくほどける甘さを舌の上で転がしながら、これなら調子がいい時に口に入れられそうだなとぼんやり思って。

「大丈夫です。宗親むねちかさんが食べられそうなものを色々試行錯誤してくださるので」

 言ったら、夏凪さんが一瞬だけ瞳を見開いてから、「春凪はなさんをオロオロしながら甘やかすお兄様の姿が目に浮かぶようですわ」と、クスクス笑った。

 そう言えば幼い頃、夏凪さんも宗親さんにかなり甘やかされたと聞いたことがある。

 宗親さんの口振りからもそれは時折垣間見えて。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

処理中です...