【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
325 / 366
40.記憶と結びつくもの

許可をください!

しおりを挟む
「明後日。日中ほたるとお出かけする許可をください! む、宗親むねちかさんがお仕事を終えられるまでには絶対絶対戻ってきますので! お願いします!」

「……春凪はな?」

 Misokaミソカから帰宅するなり拝むようにして宗親さんへ畳み掛けた私に、彼が珍しくお酒の気配を感じさせる鼻に掛かった声で私の名前をつぶやいた。

 年末年始の連休を間近に控えたこの時期。
 普通に考えても忙しいであろうところにもってきて、宗親さんの転職と自分自身の退職に向けての準備などで休んでいる場合じゃないことは百も承知の上でのワガママなおねだりだ。

 ガバッと頭を下げたまま、顔を上げられない私は宗親さんの出方が気になってフルフルと身体を震わせる。
 お酒の力を借りていなかったら、こんな無謀なお願い自体出来なかったかも知れない。

 でも仕方ないじゃない。

 ちょうど二日後の明後日が、ほたるの仕事がお休みで、もっと言うとそこが正にクリスマスイブ当日と言う差し迫った時期だったんだもん。

 八月七日の宗親むねちかさんのお誕生日に何のお祝いも出来なかったダメダメ妻な私としては、何としてもこのクリスマスだけは外せなかったの。

 ほたると、Misokaミソカで二人、男性陣の気配を気にしながら作戦会議をして、プレゼント選びに出掛けるならそこしかない!という結論に達したのだ。


「あ、あの……ほたるから明智あけちさんのお誕生日プレゼントを選ぶのに付き合って欲しいって頼まれて……それで」

 恐る恐る彼の様子をうかがうように顔を上げて。
 本当は自分自身が宗親さんのクリスマスプレゼントを選びたい癖に、すべての罪をほたるになすり付けるような言い方をした私に、宗親さんが一瞬だけスッと目をすがめたのが分かった。

 何につけても察しの良い宗親さんをあざむくことなんて無理なのかもしれない。

 その瞬間そんなことを思って、ヘビに睨まれたカエルの気持ちでキュゥッと身体を縮こまらせたら、「明智の誕生日、三十日でしたっけ」と存外穏やかな声が降り注いできた。

 それと同時、ふわりと頭を撫でられて、「それなら仕方ありませんね。でも、夜は絶対僕のために時間をあけること。――いいですね?」と間近でじっと顔を見つめられる。


 康平との一件があって以来、宗親むねちかさんの過保護には拍車が掛かっている。
 そんな彼を説得してほたると二人きりで出かけることは、かなり困難を極めるだろうと覚悟していた私は、余りにあっさりOKをもらえたことに拍子抜けしてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

処理中です...