【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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38.心を鬼にして

せっかく取り戻して頂いたのに

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 そんなこんなで何か動きがあった場合、警察や弁護士などからの連絡は全て宗親むねちかさんの携帯電話に入るようにしてもらって、基本私はノータッチ。

 入ってきた情報のなかで、宗親さんが必要があると判断したもののみ、今回みたいに私に伝えて下さる感じで。

 さすがにまだあの日のことを思い出すと心臓がバクバクしてしまう私には、宗親さんのそう言う諸々の申し出と配慮が本当に有難かった。


***


「せっかく取り戻して頂いたのに……これをする機会って……きっと、もう数えるくらいしかないですよね」

 大きなダイヤが輝く婚約指輪を眺めながら、ホゥっと溜め息をつく。

 はめるたび、指が腫れてしまいそうに思えた大ぶりのダイヤの両サイドに、小さなダイヤが三つずつ配された煌びやかなデザインのエンゲージリング。
 付けることを宗親さんに強要(?)されていた時には「目立ちすぎてしんどい」と思っていた指輪だったけれど、いざ以前みたいには付けていられないのかな?と思ったら、ワガママだけどちょっぴり寂しくなった。

 婚約指輪は、その名の通り婚約している人がつける指輪だと思う。

 結婚したら旦那とペアになった結婚指輪を付けるのが普通だ。
 婚約指輪も、ものによっては結婚指輪との重ね付けが出来るらしいけれど、私が宗親さんに頂いたこれはそれを許してくれるような控えめなデザインではなかったから。

 今後この指輪を付けられる機会があるとしたら、例えば華やかな晴れの席――友人知人の結婚式や、二人の記念日など――以外にはないんじゃないかな?と思って。

(でも――)

 この指輪を見ると、康平とのことを思い出してゾクリとしてしまうのも否めない。

 果たしておめでたい席に、あんなことがあった指輪をして行くのは適切だろうか?と思ったら、ソワソワと心がざわついて。

(ほたるが明智あけちさんと結婚するってなっても、私、この指輪を付けて参列するのはきっと無理だ)

 半ば無意識。
 大切な親友のおめでたい日に、怖い思い出を連れて行くのはイヤだ、って思ってしまっていることに気が付いて、私はハッとした。

 婚約期間だって、色々あってあやふやだった私たちだ。
 元々そう呼べる期間自体がそんなに長かったわけじゃないのに、その貴重な時間を不本意とは言え、私のせいで削ってしまったこと。また指輪には罪なんてないのに、今後もそれを付けることを躊躇ためらってしまう自分に、少なからず罪悪感を感じてしまう。

 そんな私に、宗親むねちかさんがニコッと笑って、「春凪はなならきっと、そう言うだろうなと思って……勝手なんですが珠洲谷すずやさんに頼んでコレを用意してもらいました」って言うの。

 珠洲谷すずやさんといえば、婚約指輪を買うときにお世話になったジュエリーショップのオーナーさんだ。

 そんなことを考えながら宗親さんに差し出された数枚の紙片を手に取った私は、瞳を見開いた。

「これって……」
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