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37.落とし前をつけてもらいましょう
定時過ぎの呼び出し
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【side宗親】
よりによって、夜に春凪と出掛ける予定の日に社長から呼び出しとか。
何の嫌がらせだよ!と思った。
定時を過ぎてからの不自然な招集。
業務連絡ならばあり得ないことなだけに大体察しはついていたけれど、社長室に通されてみると案の定予想通りと言うべきか。
父・嵩峰が待っていた。
この会社――神代組の社長を部下か何かの様に斜め後方に従えた状態で父が言ったのは、なるべく早く身を固めてオリタ建設に戻ってこいという話で。
有無を言わせぬ口調で「式の準備や手配は全部オリタ建設がやる。お前は神代組の引き継ぎを迅速に進めることだけを考えなさい」と付け加えられた僕は、小さく吐息を落とした。
「春凪との式は彼女の意向に沿うものをしたいと思ってるので、口出しするなというのは断固お断りいたします」
もちろん、僕だって社長の息子ということでオリタの方ではそれなりに責任ある立場に置いてもらっているのは心得ている。
全部が全部思い通りにはならないのは承知しているし、ある程度は両親の方の存意も汲まねばならないだろう。
ああ。僕だって自分だけのことならいくらでも聞いてやるさ。
だけど――。
春凪にとって、結婚式は一生に一度の晴れ舞台だ。
僕は夫として春凪の意思を最大限尊重する義務がある。
表向きは父親がトップということになっている織田の会社も、実質的に力があるのは織田の血を引く母・葉月の方だ。
大方母からせっつかれて来たんだろうが、ご苦労なことだな、と思って。
惚れた女にメロメロと言う意味で、僕は目の前の父親に共感を覚えないではない。
だから全否定をすることだけは控えたのだけれど。
父は結婚式のことのみならず、僕の妻になるという大義名分で春凪の身の振り方についてもアレコレと口出しして来たから。
存外それらの話が長引いてしまった。
お陰様で着替えに戻るのもシャワーを浴びに帰るのも諦めた僕は、押っ取り刀でMisokaに向かう羽目になって――。
だけど後から思えば、もっと早く駆けつけるべきだったんだ。
よりによって、夜に春凪と出掛ける予定の日に社長から呼び出しとか。
何の嫌がらせだよ!と思った。
定時を過ぎてからの不自然な招集。
業務連絡ならばあり得ないことなだけに大体察しはついていたけれど、社長室に通されてみると案の定予想通りと言うべきか。
父・嵩峰が待っていた。
この会社――神代組の社長を部下か何かの様に斜め後方に従えた状態で父が言ったのは、なるべく早く身を固めてオリタ建設に戻ってこいという話で。
有無を言わせぬ口調で「式の準備や手配は全部オリタ建設がやる。お前は神代組の引き継ぎを迅速に進めることだけを考えなさい」と付け加えられた僕は、小さく吐息を落とした。
「春凪との式は彼女の意向に沿うものをしたいと思ってるので、口出しするなというのは断固お断りいたします」
もちろん、僕だって社長の息子ということでオリタの方ではそれなりに責任ある立場に置いてもらっているのは心得ている。
全部が全部思い通りにはならないのは承知しているし、ある程度は両親の方の存意も汲まねばならないだろう。
ああ。僕だって自分だけのことならいくらでも聞いてやるさ。
だけど――。
春凪にとって、結婚式は一生に一度の晴れ舞台だ。
僕は夫として春凪の意思を最大限尊重する義務がある。
表向きは父親がトップということになっている織田の会社も、実質的に力があるのは織田の血を引く母・葉月の方だ。
大方母からせっつかれて来たんだろうが、ご苦労なことだな、と思って。
惚れた女にメロメロと言う意味で、僕は目の前の父親に共感を覚えないではない。
だから全否定をすることだけは控えたのだけれど。
父は結婚式のことのみならず、僕の妻になるという大義名分で春凪の身の振り方についてもアレコレと口出しして来たから。
存外それらの話が長引いてしまった。
お陰様で着替えに戻るのもシャワーを浴びに帰るのも諦めた僕は、押っ取り刀でMisokaに向かう羽目になって――。
だけど後から思えば、もっと早く駆けつけるべきだったんだ。
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