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35.やり直そう
ろくでなし
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「なぁ春凪。俺、お前と別れた時に潔くお前の番号消しちまってっからさ。今お前に逃げられたら連絡取れなくなっちまうんだよ」
まるで「逃がさない」と言われているみたいに腕の力を更に強められた私は、痛みに思わず眉根を寄せて。
「また毎日のようにMisoka前でいつ来るか分かりもしねぇお前を待ち伏せすんの、もう飽き飽きなんだわ」
勝手なことを言う康平のぼやきを聞きながら、心の中では彼が私の連絡先を消してくれていて良かったと心底ホッとした。
私も康平と別れた後、情けなくて悔しくて悲しくて……。
ほたるに「そんなサイテー男の番号なんてさっさと消しちゃえ」って勧められてMisokaで飲んだ時、ほたるの目の前で康平の番号を連絡先から抹消してある。
だけど自分の番号は変えたりはしていなかったから。
康平が、フった私のデータを潔く?削除してくれていて良かった!と思いながら、どうせならずっと潔いままでいてくれたら良かったのに!と至極当たり前のことを思った。
「坂本さんはお前と違ってしょっちゅうここに来てるけどさ。彼女に聞いても全然教えてくんねぇんだわ。だから――」
そこまで言うと、康平が私の耳に唇を寄せて囁くの。
「手ぇ離して欲しかったら連絡先教えろよ、春凪」
付き合っていた頃は大好きだったはずの康平の声が、今はただただ嫌悪の対象でしかない。
今すぐにでも宗親さんに「春凪」って呼んでもらって、この寒気がするような不快感を綺麗さっぱり払拭して欲しい。
そんな康平に連絡先なんか教えたくないという意思表示でフルフルと首を横に振ったら、すぐ耳元で康平がチッと舌打ちをして。
「だったら今ここで婚約者んトコに戻れねぇ身体にしてやるけど、それでもいい?」
サラリと恐ろしいことを言って、康平がまるでキスでもしたいみたいに顔を寄せてくる。
私はそんなの絶対に嫌だったから、思いっきり身体を反らせて彼から逃れようともがきながら必死に喚いた。
「嫌ぁっ! 康平! 離して‼︎」
目の前の私から、悲鳴に似た声が口を突いて出ているというのに、一向に怯まない康平に、私は絶望的な気持ちになる。
私はこんな碌でもない男と一年半も交際していたの?
付き合っていた頃のことまで否定したくなんてないのに、過去まで丸っと無かったことにしたくなるような愚行、お願いだからやめて!
必死に抵抗して私を掴んだ康平の腕を引っ掻いたら痛かったのかな。一瞬だけ彼の腕の力が緩んだ。
私はその隙を逃さず、拘束する腕から抜け出すと道のほうに向かって走り出ようとして。
康平に足を引っ掛けられて前のめりにつんのめった。
「きゃっ」
咄嗟に両手を突いて身体を支えたけれど、両膝を盛大に擦りむいてズキッとした痛みが走る。
まるで「逃がさない」と言われているみたいに腕の力を更に強められた私は、痛みに思わず眉根を寄せて。
「また毎日のようにMisoka前でいつ来るか分かりもしねぇお前を待ち伏せすんの、もう飽き飽きなんだわ」
勝手なことを言う康平のぼやきを聞きながら、心の中では彼が私の連絡先を消してくれていて良かったと心底ホッとした。
私も康平と別れた後、情けなくて悔しくて悲しくて……。
ほたるに「そんなサイテー男の番号なんてさっさと消しちゃえ」って勧められてMisokaで飲んだ時、ほたるの目の前で康平の番号を連絡先から抹消してある。
だけど自分の番号は変えたりはしていなかったから。
康平が、フった私のデータを潔く?削除してくれていて良かった!と思いながら、どうせならずっと潔いままでいてくれたら良かったのに!と至極当たり前のことを思った。
「坂本さんはお前と違ってしょっちゅうここに来てるけどさ。彼女に聞いても全然教えてくんねぇんだわ。だから――」
そこまで言うと、康平が私の耳に唇を寄せて囁くの。
「手ぇ離して欲しかったら連絡先教えろよ、春凪」
付き合っていた頃は大好きだったはずの康平の声が、今はただただ嫌悪の対象でしかない。
今すぐにでも宗親さんに「春凪」って呼んでもらって、この寒気がするような不快感を綺麗さっぱり払拭して欲しい。
そんな康平に連絡先なんか教えたくないという意思表示でフルフルと首を横に振ったら、すぐ耳元で康平がチッと舌打ちをして。
「だったら今ここで婚約者んトコに戻れねぇ身体にしてやるけど、それでもいい?」
サラリと恐ろしいことを言って、康平がまるでキスでもしたいみたいに顔を寄せてくる。
私はそんなの絶対に嫌だったから、思いっきり身体を反らせて彼から逃れようともがきながら必死に喚いた。
「嫌ぁっ! 康平! 離して‼︎」
目の前の私から、悲鳴に似た声が口を突いて出ているというのに、一向に怯まない康平に、私は絶望的な気持ちになる。
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私はその隙を逃さず、拘束する腕から抜け出すと道のほうに向かって走り出ようとして。
康平に足を引っ掛けられて前のめりにつんのめった。
「きゃっ」
咄嗟に両手を突いて身体を支えたけれど、両膝を盛大に擦りむいてズキッとした痛みが走る。
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