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35.やり直そう
明智と、お友達のことは後から話しましょう
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Red Roofでほたるに告げられた康平の不穏な話が一瞬頭を掠めたけれど、私はそれを頭から追い出した。
「一応何かあってからじゃ遅いし、婚約者さんにも相談しといた方がいいよ」ってほたるには言われたけれど、今更そんなことを言って、思いのほかヤキモチ妬きな宗親さんに杞憂の種を蒔くのは、はばかられてしまったから。
――きっと大丈夫。
そう思い込もうとして。
「有難うございます」
口の中のチーズの塩気が消えないうちに、不安と一緒にビールを喉に流し込んだら本当美味しくて。
康平のことも綺麗に喉の奥に飲み込めた。
「まるでお店に来ているみたいですっ」
黒胡椒バージョンにも手を伸ばしながら素直な感想を漏らしたら「明智に色々教わりましたから」って……わー、それってもしかして。
「……私のためですか?」
――なんて自惚れてみたくなるではないですかっ。
「当然です。僕はキミをなるべくMisokaに行かせたくないので……」
久々に、家で宗親さんの腹黒スマイルを見た気がします。
職場では基本鬼上司なのでドS腹黒スマイル率が高めの宗親さんだけど、家ではあの告白以来ずっと甘々モード全開で。
基本的には心からの笑顔を私に向けてくださるばかりだったから。
含みを感じさせる笑みを浮かべて私をじっと見つめてきた宗親さんに、ドクンッと心臓が跳ね上がった。
Misokaに行かせたくないと言われるのは困るけれど、ただ「行くな」じゃなくて「行かなくてもいい」ように努力してくださっているところにキュンとしてしまった。
「宗親さん……」
ここは怒るところなのかも知れないのに、もっともっと私を独り占めして欲しいなんて思ってしまう私はおかしいのかな。
宗親さんは手にしていたグラスをローテーブルに戻すと、私が持ったままのグラスも取り上げて。
好みのド・ストライクなお顔が間近に近付いてきて、「キスしていい?」と聞かれた私は、コクッと頷きながら目をギュッとつぶった。
後頭部にそっと手を添えられて、ふわりと押し当てられた宗親さんの唇がいつもより冷たくて思わず身体を引きそうになる。
それを許さないみたいに後頭部を押さえられて、口付けを深くされた。
「んっ、……ふぁっ」
ビールを飲んでいらしたからかな。
いつもよりほろ苦い宗親さんの舌に翻弄されて、私の脳みそは甘く甘く蕩かされていく。
(ほたるのこと、相談しなきゃ……)
頭の奥でそんなことを思うのに、いつの間にか目の前の宗親さんのことしか考えられなくなっていた。
「宗、親さっ、私……もう」
唇が離れると同時、トロンとした目で宗親さんを見上げたら、彼が私の身体をふわりと横抱きに抱え上げて。
「明智と、お友達のことは後から話しましょう」
私を見下ろした宗親さんが、〝男の人〟の顔をしてそう言った。
「一応何かあってからじゃ遅いし、婚約者さんにも相談しといた方がいいよ」ってほたるには言われたけれど、今更そんなことを言って、思いのほかヤキモチ妬きな宗親さんに杞憂の種を蒔くのは、はばかられてしまったから。
――きっと大丈夫。
そう思い込もうとして。
「有難うございます」
口の中のチーズの塩気が消えないうちに、不安と一緒にビールを喉に流し込んだら本当美味しくて。
康平のことも綺麗に喉の奥に飲み込めた。
「まるでお店に来ているみたいですっ」
黒胡椒バージョンにも手を伸ばしながら素直な感想を漏らしたら「明智に色々教わりましたから」って……わー、それってもしかして。
「……私のためですか?」
――なんて自惚れてみたくなるではないですかっ。
「当然です。僕はキミをなるべくMisokaに行かせたくないので……」
久々に、家で宗親さんの腹黒スマイルを見た気がします。
職場では基本鬼上司なのでドS腹黒スマイル率が高めの宗親さんだけど、家ではあの告白以来ずっと甘々モード全開で。
基本的には心からの笑顔を私に向けてくださるばかりだったから。
含みを感じさせる笑みを浮かべて私をじっと見つめてきた宗親さんに、ドクンッと心臓が跳ね上がった。
Misokaに行かせたくないと言われるのは困るけれど、ただ「行くな」じゃなくて「行かなくてもいい」ように努力してくださっているところにキュンとしてしまった。
「宗親さん……」
ここは怒るところなのかも知れないのに、もっともっと私を独り占めして欲しいなんて思ってしまう私はおかしいのかな。
宗親さんは手にしていたグラスをローテーブルに戻すと、私が持ったままのグラスも取り上げて。
好みのド・ストライクなお顔が間近に近付いてきて、「キスしていい?」と聞かれた私は、コクッと頷きながら目をギュッとつぶった。
後頭部にそっと手を添えられて、ふわりと押し当てられた宗親さんの唇がいつもより冷たくて思わず身体を引きそうになる。
それを許さないみたいに後頭部を押さえられて、口付けを深くされた。
「んっ、……ふぁっ」
ビールを飲んでいらしたからかな。
いつもよりほろ苦い宗親さんの舌に翻弄されて、私の脳みそは甘く甘く蕩かされていく。
(ほたるのこと、相談しなきゃ……)
頭の奥でそんなことを思うのに、いつの間にか目の前の宗親さんのことしか考えられなくなっていた。
「宗、親さっ、私……もう」
唇が離れると同時、トロンとした目で宗親さんを見上げたら、彼が私の身体をふわりと横抱きに抱え上げて。
「明智と、お友達のことは後から話しましょう」
私を見下ろした宗親さんが、〝男の人〟の顔をしてそう言った。
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