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33.彼には彼なりの理由があったわけで
害虫よけ
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宗親さんは明智さんと旧知の仲で、私がコウちゃんと、彼が飲食した分まで支払っちゃうぐらい媚びへつらってお付き合いしていた頃のことをご存知。
Misokaのマスター明智さんはそんな私に、いつも信じられないぐらいお安くお酒とおつまみを提供して下さっていた。
それこそ採算度外視な割引率だったけど、別に明智さんはお金持ちの道楽でMisokaをやっていらっしゃるわけじゃなくて――。
宗親さんはそんな彼に感謝する私に、悲しそうな顔をして「僕なのに」っておっしゃった。
えっ。ちょっと待って? これってもしかして――。
「――宗親さんのお陰……だったの?」
私が信じられないような破格でMisokaのサービスを受けられていた理由。
「宗親さんが……足りないところを補填して下さっていたから……私あんなにお安く――?」
そこまで言ったら、宗親さんがグッと唇を噛んで、「恥ずかしいからそれ以上言わないで」って私の頭をご自分の胸元に押さえつけるようにして口を封じてしまう。
「一生隠し通すつもりだったのに春凪がいけないんです。明智をあんまり褒めるから」
***
「とっ、とりあえずご飯、食べてくださいっ」
何だか抱きしめられたまま、なし崩し的に甘々エッチモードに突入しそうだったので、私はグッと宗親さんを押すようにして身体を無理矢理引き剥がすと、キッチンに置き去りになったままの「サバの味噌煮込み定食」に視線を向けた。
「あっ、そうだ! 折角だから届いたばかりのマグも使いましょう!」
言って、いそいそと玄関に逃げる。
「春凪っ、まだ話が……っ」
後ろで宗親さんが私を呼ぶ声がしたけれど今はとりあえず無視無視!
私はパタパタと足音を響かせて玄関に向かって。
マグの入った小箱を持ち上げて振り返った――ところでまたしても宗親さんに捕まってしまう。
「まだ僕にとって一番肝心なこと、言えてないんですけど」
宗親さんにグッと左手を取られて、手にしたばかりの小箱が足元に転がった。
「あっ!」
(わ、割れちゃう!)
割れ物が入っているのは分かっているはずなのにお構いなしの宗親さんの態度にムッとして彼を睨んだら、負けないくらい怖い顔で睨み返されてしまう。
「――っ‼︎」
(ひーっ、何でそんな怖いお顔っ?)
ヘビに睨まれたカエルよろしく、私は声が出せずに固まった。
「春凪、僕が渡した害虫よけはどこにやったの?」
怖い顔のまま見下ろされて、「が、いちゅう?」と、私は意味が分からないままに宗親さんの言葉を復唱して。
私、宗親さんからそんなの渡されてましたっけ?と頭をフル回転させる。
考えても分からないからソワソワと落ち着かないまま、オロオロと彼を見上げた。
「ここに常に付けるように言っておいたでしょう? とっても目立つヤツ」
言われて左手薬指をスリスリと撫でられた私は、その感触にゾクッと身体を震わせながらも彼が言っている〝害虫除け〟は〝婚約指輪〟のことだと理解した。
Misokaのマスター明智さんはそんな私に、いつも信じられないぐらいお安くお酒とおつまみを提供して下さっていた。
それこそ採算度外視な割引率だったけど、別に明智さんはお金持ちの道楽でMisokaをやっていらっしゃるわけじゃなくて――。
宗親さんはそんな彼に感謝する私に、悲しそうな顔をして「僕なのに」っておっしゃった。
えっ。ちょっと待って? これってもしかして――。
「――宗親さんのお陰……だったの?」
私が信じられないような破格でMisokaのサービスを受けられていた理由。
「宗親さんが……足りないところを補填して下さっていたから……私あんなにお安く――?」
そこまで言ったら、宗親さんがグッと唇を噛んで、「恥ずかしいからそれ以上言わないで」って私の頭をご自分の胸元に押さえつけるようにして口を封じてしまう。
「一生隠し通すつもりだったのに春凪がいけないんです。明智をあんまり褒めるから」
***
「とっ、とりあえずご飯、食べてくださいっ」
何だか抱きしめられたまま、なし崩し的に甘々エッチモードに突入しそうだったので、私はグッと宗親さんを押すようにして身体を無理矢理引き剥がすと、キッチンに置き去りになったままの「サバの味噌煮込み定食」に視線を向けた。
「あっ、そうだ! 折角だから届いたばかりのマグも使いましょう!」
言って、いそいそと玄関に逃げる。
「春凪っ、まだ話が……っ」
後ろで宗親さんが私を呼ぶ声がしたけれど今はとりあえず無視無視!
私はパタパタと足音を響かせて玄関に向かって。
マグの入った小箱を持ち上げて振り返った――ところでまたしても宗親さんに捕まってしまう。
「まだ僕にとって一番肝心なこと、言えてないんですけど」
宗親さんにグッと左手を取られて、手にしたばかりの小箱が足元に転がった。
「あっ!」
(わ、割れちゃう!)
割れ物が入っているのは分かっているはずなのにお構いなしの宗親さんの態度にムッとして彼を睨んだら、負けないくらい怖い顔で睨み返されてしまう。
「――っ‼︎」
(ひーっ、何でそんな怖いお顔っ?)
ヘビに睨まれたカエルよろしく、私は声が出せずに固まった。
「春凪、僕が渡した害虫よけはどこにやったの?」
怖い顔のまま見下ろされて、「が、いちゅう?」と、私は意味が分からないままに宗親さんの言葉を復唱して。
私、宗親さんからそんなの渡されてましたっけ?と頭をフル回転させる。
考えても分からないからソワソワと落ち着かないまま、オロオロと彼を見上げた。
「ここに常に付けるように言っておいたでしょう? とっても目立つヤツ」
言われて左手薬指をスリスリと撫でられた私は、その感触にゾクッと身体を震わせながらも彼が言っている〝害虫除け〟は〝婚約指輪〟のことだと理解した。
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