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33.彼には彼なりの理由があったわけで

仲睦まじい二人?

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それでしょれれしゃば味噌みしょ煮込み定食てぇしょきゅのご感想かんしょぉは」

 宗親むねちかさんに、腰をしっかりホールドされながらフラフラ歩きつつ、彼のお顔を見上げて尋ねたら「すみません、実はまだ食べていないんです」と吐息を落とされた。

「えっ。何れれしゅか」

「キミが……心配だったからに決まってます」

 怖い顔で見下ろされて、アレコレ酷い状態のまま家を出てきたことを思い出して。

「しゅみませ……」

 思わず原因は宗親さんだったことを失念して謝ってしまったと同時、カラランと言う聞き慣れたドアベルの音がして、私は「ん⁉︎」と思う。

Misokaみしょか?」

 琥珀色の照明と、落ち着いたクラシック音楽。
 アルコールと食べ物と、恐らくお客さんが纏う煙草の残り香――店内は禁煙だから――などが入り混じったこの独特な雰囲気は、今日来る予定にしていてドタキャンしてしまったMisokaミソカに違いなくて。


明智あけち、今日は本当にお世話になりました」

 私を伴ったまま真っ直ぐカウンターに近付いた宗親さんが、カウンター内に立つマスターに声を掛けた。

 明智さんと呼ばれたマスターが、こちらにチラリと視線を向けるなり「織田おりた、マジで心配掛けるなよな。こっちも今夜は貴重な予約客を失って大損害だ」と苦笑する。

 今日はお客さんが来始める時間帯に雨が降ったから?

 そんな風に、いつもより客の入りが少ないのを気にしていたところへそのやり取りを聞いた私は、私たちが予約をしておきながら穴をあけたのが影響してる⁉︎と気が付いて何だか申し訳ない気持ちになった。

「ごめ、なしゃ……」

 消え入りそうな声で謝ったら、すかさず「春凪はなは悪くない。単なる明智あけちの営業努力不足です!」と言う宗親むねちかさんの声と、「キミは悪くない。悪いのはキミを悲しませた織田おりただから!」と言う明智さんの声がほぼ同時に投げかけられて、私は息ぴったりな二人に思わず瞳を見開いた。

「明智に言われるのは心外なんだけど」
「こちらこそ同じなんだけどね⁉︎」

 仲睦まじく(?)言い合いしている姿も何だかとても様になっていて。

 この二人が同級生だと言うのは、先程宗親さんご本人から聞いて知ってはいたけれど、実際にこうやって歯に衣着せぬ問答をしているのを見ると、変な感じがしてしまう。

 だって前にここで初めて宗親むねちかさんと対面した時、二人は微塵もそんな感じじゃなかったもの。

(あれは二人でわざとあんな雰囲気になるよう示し合わせてたのかな?)

 何のためかは分からないけれど、私、まんまと騙されていたんだ、って思って。


「お二人は本当ほんとぉに仲の良いお友達ともらちなんれしゅね」

 ホワホワとしながらもムゥーッと二人を睨み付けたら、「あれ? 柴田しばたさん、ひょっとして出来あがっちゃってる?」と、明智あけちさんにキョトンとされた。

 さっきまで喧嘩してたくせに。
 私の言葉でいつも通りの涼しいお顔になった二人に、内心「言い合い、もう終わりなの?」と密かに残念に思っていたら。


「ええ、どうやら僕のせいらしいです」

 言って、宗親さんが嬉しそうにフワッと笑ったのを、明智さんが見逃さなかったのが嬉しい。

「げっ。織田おりた。何、お前その笑顔っ。……らしくなくてすっげぇ気持ちわりぃーんだけど」

 明智さんがボソッとつぶやいて。
 私の方をチラリと見て「柴田しばたさんの影響か?」と苦笑する。

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