261 / 366
33.彼には彼なりの理由があったわけで
仲睦まじい二人?
しおりを挟む
「それで、鯖の味噌煮込み定食のご感想は」
宗親さんに、腰をしっかりホールドされながらフラフラ歩きつつ、彼のお顔を見上げて尋ねたら「すみません、実はまだ食べていないんです」と吐息を落とされた。
「えっ。何れれしゅか」
「キミが……心配だったからに決まってます」
怖い顔で見下ろされて、アレコレ酷い状態のまま家を出てきたことを思い出して。
「しゅみませ……」
思わず原因は宗親さんだったことを失念して謝ってしまったと同時、カラランと言う聞き慣れたドアベルの音がして、私は「ん⁉︎」と思う。
「Misoka?」
琥珀色の照明と、落ち着いたクラシック音楽。
アルコールと食べ物と、恐らくお客さんが纏う煙草の残り香――店内は禁煙だから――などが入り混じったこの独特な雰囲気は、今日来る予定にしていてドタキャンしてしまったMisokaに違いなくて。
「明智、今日は本当にお世話になりました」
私を伴ったまま真っ直ぐカウンターに近付いた宗親さんが、カウンター内に立つマスターに声を掛けた。
明智さんと呼ばれたマスターが、こちらにチラリと視線を向けるなり「織田、マジで心配掛けるなよな。こっちも今夜は貴重な予約客を失って大損害だ」と苦笑する。
今日はお客さんが来始める時間帯に雨が降ったから?
そんな風に、いつもより客の入りが少ないのを気にしていたところへそのやり取りを聞いた私は、私たちが予約をしておきながら穴をあけたのが影響してる⁉︎と気が付いて何だか申し訳ない気持ちになった。
「ごめ、なしゃ……」
消え入りそうな声で謝ったら、すかさず「春凪は悪くない。単なる明智の営業努力不足です!」と言う宗親さんの声と、「キミは悪くない。悪いのはキミを悲しませた織田だから!」と言う明智さんの声がほぼ同時に投げかけられて、私は息ぴったりな二人に思わず瞳を見開いた。
「明智に言われるのは心外なんだけど」
「こちらこそ同じなんだけどね⁉︎」
仲睦まじく(?)言い合いしている姿も何だかとても様になっていて。
この二人が同級生だと言うのは、先程宗親さんご本人から聞いて知ってはいたけれど、実際にこうやって歯に衣着せぬ問答をしているのを見ると、変な感じがしてしまう。
だって前にここで初めて宗親さんと対面した時、二人は微塵もそんな感じじゃなかったもの。
(あれは二人でわざとあんな雰囲気になるよう示し合わせてたのかな?)
何のためかは分からないけれど、私、まんまと騙されていたんだ、って思って。
「お二人は本当に仲の良いお友達なんれしゅね」
ホワホワとしながらもムゥーッと二人を睨み付けたら、「あれ? 柴田さん、ひょっとして出来あがっちゃってる?」と、明智さんにキョトンとされた。
さっきまで喧嘩してたくせに。
私の言葉でいつも通りの涼しいお顔になった二人に、内心「言い合い、もう終わりなの?」と密かに残念に思っていたら。
「ええ、どうやら僕のせいらしいです」
言って、宗親さんが嬉しそうにフワッと笑ったのを、明智さんが見逃さなかったのが嬉しい。
「げっ。織田。何、お前その笑顔っ。……らしくなくてすっげぇ気持ち悪ぃーんだけど」
明智さんがボソッとつぶやいて。
私の方をチラリと見て「柴田さんの影響か?」と苦笑する。
宗親さんに、腰をしっかりホールドされながらフラフラ歩きつつ、彼のお顔を見上げて尋ねたら「すみません、実はまだ食べていないんです」と吐息を落とされた。
「えっ。何れれしゅか」
「キミが……心配だったからに決まってます」
怖い顔で見下ろされて、アレコレ酷い状態のまま家を出てきたことを思い出して。
「しゅみませ……」
思わず原因は宗親さんだったことを失念して謝ってしまったと同時、カラランと言う聞き慣れたドアベルの音がして、私は「ん⁉︎」と思う。
「Misoka?」
琥珀色の照明と、落ち着いたクラシック音楽。
アルコールと食べ物と、恐らくお客さんが纏う煙草の残り香――店内は禁煙だから――などが入り混じったこの独特な雰囲気は、今日来る予定にしていてドタキャンしてしまったMisokaに違いなくて。
「明智、今日は本当にお世話になりました」
私を伴ったまま真っ直ぐカウンターに近付いた宗親さんが、カウンター内に立つマスターに声を掛けた。
明智さんと呼ばれたマスターが、こちらにチラリと視線を向けるなり「織田、マジで心配掛けるなよな。こっちも今夜は貴重な予約客を失って大損害だ」と苦笑する。
今日はお客さんが来始める時間帯に雨が降ったから?
そんな風に、いつもより客の入りが少ないのを気にしていたところへそのやり取りを聞いた私は、私たちが予約をしておきながら穴をあけたのが影響してる⁉︎と気が付いて何だか申し訳ない気持ちになった。
「ごめ、なしゃ……」
消え入りそうな声で謝ったら、すかさず「春凪は悪くない。単なる明智の営業努力不足です!」と言う宗親さんの声と、「キミは悪くない。悪いのはキミを悲しませた織田だから!」と言う明智さんの声がほぼ同時に投げかけられて、私は息ぴったりな二人に思わず瞳を見開いた。
「明智に言われるのは心外なんだけど」
「こちらこそ同じなんだけどね⁉︎」
仲睦まじく(?)言い合いしている姿も何だかとても様になっていて。
この二人が同級生だと言うのは、先程宗親さんご本人から聞いて知ってはいたけれど、実際にこうやって歯に衣着せぬ問答をしているのを見ると、変な感じがしてしまう。
だって前にここで初めて宗親さんと対面した時、二人は微塵もそんな感じじゃなかったもの。
(あれは二人でわざとあんな雰囲気になるよう示し合わせてたのかな?)
何のためかは分からないけれど、私、まんまと騙されていたんだ、って思って。
「お二人は本当に仲の良いお友達なんれしゅね」
ホワホワとしながらもムゥーッと二人を睨み付けたら、「あれ? 柴田さん、ひょっとして出来あがっちゃってる?」と、明智さんにキョトンとされた。
さっきまで喧嘩してたくせに。
私の言葉でいつも通りの涼しいお顔になった二人に、内心「言い合い、もう終わりなの?」と密かに残念に思っていたら。
「ええ、どうやら僕のせいらしいです」
言って、宗親さんが嬉しそうにフワッと笑ったのを、明智さんが見逃さなかったのが嬉しい。
「げっ。織田。何、お前その笑顔っ。……らしくなくてすっげぇ気持ち悪ぃーんだけど」
明智さんがボソッとつぶやいて。
私の方をチラリと見て「柴田さんの影響か?」と苦笑する。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ただいま冷徹上司を調・教・中!
伊吹美香
恋愛
同期から男を寝取られ棄てられた崖っぷちOL
久瀬千尋(くぜちひろ)28歳
×
容姿端麗で仕事もでき一目置かれる恋愛下手課長
平嶋凱莉(ひらしまかいり)35歳
二人はひょんなことから(仮)恋人になることに。
今まで知らなかった素顔を知るたびに、二人の関係は近くなる。
意地と恥から始まった(仮)恋人は(本)恋人になれるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる