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32.春凪の愚痴と宗親の本心
三十九分ちょーだい!
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北条くんも忘れていたらしいけど、私の横に男性らしき人影があるからてっきり彼だろうと持って降りて来てみたら、北条くんではなく宗親さんだった、と言うのが真相らしい。
(足利くんが驚いたの、当然かぁ~)
ちなみに私の傘は、ほたるが服と一緒に貸してくれたものだったから、持って来てもらえて本当に助かった。
「有難ぉ、足利きゅん……」
差し出された傘を受け取りながら言ったら、「柴田さん、まだ呂律回ってねぇのな」って笑われてしまった。
そこで宗親さんにチラリと視線を移すと、「彼女、相当参ってて飲み過ぎたみたいなんです。しっかりケアしてあげてください」とペコリと頭を下げて「じゃあ俺はこれで」とさっさと踵を返してしまう。
私は何も言い返せなくて金魚みたいに口をパクパクさせてしまう。
宗親さんがそんな私をギュッと抱きしめて、「こんなところで立ち話も何ですし、僕らも帰りましょうか。続きは家でゆっくり……」とささやいた。
宗親さんの視線の先、彼の愛車の黒いハリアーが見えて。
私はコクッと頷いてから、「車の中れ、ほたるに電話してもいいれすか?」と問いかけた。
――ごめんね、今夜は家に帰ることになったの。後日また改めて会おうね。
そう、ほたるに伝えなくては。
***
結局ほたるには電話だけではなく、直接会いに行くことになってしまった。
宗親さんが、「春凪がお世話になったのですから」と譲ってくれなくて。
押し問答の末、半ば押し切られる形で彼と訪問することになったとほたるに連絡する羽目になったのだけれど。
「夜ですし、春凪だけだと思って応対したのに僕が居たら驚かれるかも知れないでしょう?」
主に、ほたるの服装などの面で心配してくださっているみたい。
「しょれならっ、訪問自体を控えたらいいんれしゅよ」
言ったら、「お金もお借りしているようですし、そういうわけにはいきません」って意味が分かりません。
彼が一緒だと伝えたら、ほたるはとても慌てていたけれど、反面私の〝婚約者〟に興味も持ったみたいで。
『お願い。三十九分ちょーだい!』
と勢いよく電話を切ってしまった。
ちょと待って、ほたるっ。
何故にそんな中途半端な数値指定っ⁉︎
「……だそうれしゅ」
スピーカー通話にしていたわけではないけれど、しっかり外に漏れ聞こえてしまったほたるの声に苦笑しながら宗親さんを見つめたら、
「了解です」
言って、彼は上機嫌で車を発進させて。
「お友達の支度が整うまで軽くデートしましょう」
とか。
何だかよく分かんないですけど、宗親さんは私に好きだと言って下さって(まだ信じられないですが!)からキャラ変なさった気がします。
車を走らせながら、婚姻届未提出の理由について話してくださるのかと思っていたら、それは私の酔いがちゃんと覚めてから、と言われてしまった。
口調こそ微妙だけど、「頭は結構ハッキリしてりゅんれしゅよ」と一生懸命説明してみたけれど、口調がマズイのがダメなんだとか。
もぉー! わけ分かんないっ!
(足利くんが驚いたの、当然かぁ~)
ちなみに私の傘は、ほたるが服と一緒に貸してくれたものだったから、持って来てもらえて本当に助かった。
「有難ぉ、足利きゅん……」
差し出された傘を受け取りながら言ったら、「柴田さん、まだ呂律回ってねぇのな」って笑われてしまった。
そこで宗親さんにチラリと視線を移すと、「彼女、相当参ってて飲み過ぎたみたいなんです。しっかりケアしてあげてください」とペコリと頭を下げて「じゃあ俺はこれで」とさっさと踵を返してしまう。
私は何も言い返せなくて金魚みたいに口をパクパクさせてしまう。
宗親さんがそんな私をギュッと抱きしめて、「こんなところで立ち話も何ですし、僕らも帰りましょうか。続きは家でゆっくり……」とささやいた。
宗親さんの視線の先、彼の愛車の黒いハリアーが見えて。
私はコクッと頷いてから、「車の中れ、ほたるに電話してもいいれすか?」と問いかけた。
――ごめんね、今夜は家に帰ることになったの。後日また改めて会おうね。
そう、ほたるに伝えなくては。
***
結局ほたるには電話だけではなく、直接会いに行くことになってしまった。
宗親さんが、「春凪がお世話になったのですから」と譲ってくれなくて。
押し問答の末、半ば押し切られる形で彼と訪問することになったとほたるに連絡する羽目になったのだけれど。
「夜ですし、春凪だけだと思って応対したのに僕が居たら驚かれるかも知れないでしょう?」
主に、ほたるの服装などの面で心配してくださっているみたい。
「しょれならっ、訪問自体を控えたらいいんれしゅよ」
言ったら、「お金もお借りしているようですし、そういうわけにはいきません」って意味が分かりません。
彼が一緒だと伝えたら、ほたるはとても慌てていたけれど、反面私の〝婚約者〟に興味も持ったみたいで。
『お願い。三十九分ちょーだい!』
と勢いよく電話を切ってしまった。
ちょと待って、ほたるっ。
何故にそんな中途半端な数値指定っ⁉︎
「……だそうれしゅ」
スピーカー通話にしていたわけではないけれど、しっかり外に漏れ聞こえてしまったほたるの声に苦笑しながら宗親さんを見つめたら、
「了解です」
言って、彼は上機嫌で車を発進させて。
「お友達の支度が整うまで軽くデートしましょう」
とか。
何だかよく分かんないですけど、宗親さんは私に好きだと言って下さって(まだ信じられないですが!)からキャラ変なさった気がします。
車を走らせながら、婚姻届未提出の理由について話してくださるのかと思っていたら、それは私の酔いがちゃんと覚めてから、と言われてしまった。
口調こそ微妙だけど、「頭は結構ハッキリしてりゅんれしゅよ」と一生懸命説明してみたけれど、口調がマズイのがダメなんだとか。
もぉー! わけ分かんないっ!
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