227 / 366
29.目立ち過ぎて困ります
この人苦手です
しおりを挟む
「あ、あのっ、えっと……その、こ、婚約をしたと申しますか……何というか」
実際には入籍まで済ませているのに今更「婚約しました」というのは何だかはばかられて。
でも指にはまっているのが〝婚約指輪〟な以上、そう伝えるのが一番しっくりくるし説明が面倒くさくない、よ、ね?とも思ってしまう。
「婚約!? ――って……え!? ちょ、嘘だろ? この前恋人いないって……。あー、婚約者はいるけどってやつだったか。はぁー、マジかぁー。地味にショックだわぁー」
私の言葉を額面通りに受け取って驚いてくれる素直な足利くんに対して、――北条くん!
「何というかって何だ? したのか、してないのかはっきりしてくれないか? 曖昧な物言いされるとすげぇイライラする」
えええ!? そこ突っ込んできます?
やっぱり私、北条くん苦手です!
「なっ、何でそんなこと気にするんですか……? 北条くんには関係ないですよね?」
百歩譲って興味本位だとして、そんなの要らないお世話だよ?
問い掛けておきながら、この場から一刻も早く逃げ出したい私は、資料を片手に持ち変えてエレベーターの呼び出しボタンを押した。
箱は下の方にあるみたいで、上がってくるのに少し時間を要しそうで。
北条くんの物言いにムカッとして思わず言い返してはみたものの、慣れないことに鼻の奥がツンとして視界がじんわりぼやけてきてしまった。
(あーん、私のバカ!)
自分から突っ込んでおいて泣きべそをかいてしまったのを見られたくなかった私は、なかなか上がってこないエレベーターに心の中で密かに溜め息を落とす。
そんな私に、「キミは本当にバカなのか? 祝いのことが絡んでくるからに決まっているだろう!」と北条くんが腹立たしげに返してきて。
私は彼からの意外な言葉に思わず「え?」と声を漏らしていた。
(嘘。そんなに親しくないはずなのに……お祝いしてくれる気なの?)
目が涙で潤んでしまっていることも失念して北条くんを見つめたら、私の様子に一瞬瞳を見開いた彼が、さもバツが悪そうに視線を逸らしながら続けた。
「――たった四人しかいない同期に祝い事があったら祝福するのは人として当然だろうが。俺はそういう義理は欠きたくないんだよ」
北条くんのその言葉に、足利くんがククッと笑って、「コイツ。照れ屋な上に口下手だから誤解されやすいけど結構〝熱くていい奴〟なのよ」とニヤリとする。
途端、北条くんに「黙れ」と睨みつけられて、足利くんはわざとらしく肩をすくめて見せた。
実際には入籍まで済ませているのに今更「婚約しました」というのは何だかはばかられて。
でも指にはまっているのが〝婚約指輪〟な以上、そう伝えるのが一番しっくりくるし説明が面倒くさくない、よ、ね?とも思ってしまう。
「婚約!? ――って……え!? ちょ、嘘だろ? この前恋人いないって……。あー、婚約者はいるけどってやつだったか。はぁー、マジかぁー。地味にショックだわぁー」
私の言葉を額面通りに受け取って驚いてくれる素直な足利くんに対して、――北条くん!
「何というかって何だ? したのか、してないのかはっきりしてくれないか? 曖昧な物言いされるとすげぇイライラする」
えええ!? そこ突っ込んできます?
やっぱり私、北条くん苦手です!
「なっ、何でそんなこと気にするんですか……? 北条くんには関係ないですよね?」
百歩譲って興味本位だとして、そんなの要らないお世話だよ?
問い掛けておきながら、この場から一刻も早く逃げ出したい私は、資料を片手に持ち変えてエレベーターの呼び出しボタンを押した。
箱は下の方にあるみたいで、上がってくるのに少し時間を要しそうで。
北条くんの物言いにムカッとして思わず言い返してはみたものの、慣れないことに鼻の奥がツンとして視界がじんわりぼやけてきてしまった。
(あーん、私のバカ!)
自分から突っ込んでおいて泣きべそをかいてしまったのを見られたくなかった私は、なかなか上がってこないエレベーターに心の中で密かに溜め息を落とす。
そんな私に、「キミは本当にバカなのか? 祝いのことが絡んでくるからに決まっているだろう!」と北条くんが腹立たしげに返してきて。
私は彼からの意外な言葉に思わず「え?」と声を漏らしていた。
(嘘。そんなに親しくないはずなのに……お祝いしてくれる気なの?)
目が涙で潤んでしまっていることも失念して北条くんを見つめたら、私の様子に一瞬瞳を見開いた彼が、さもバツが悪そうに視線を逸らしながら続けた。
「――たった四人しかいない同期に祝い事があったら祝福するのは人として当然だろうが。俺はそういう義理は欠きたくないんだよ」
北条くんのその言葉に、足利くんがククッと笑って、「コイツ。照れ屋な上に口下手だから誤解されやすいけど結構〝熱くていい奴〟なのよ」とニヤリとする。
途端、北条くんに「黙れ」と睨みつけられて、足利くんはわざとらしく肩をすくめて見せた。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる