226 / 366
29.目立ち過ぎて困ります
結婚すんの?
しおりを挟む
足利くんが名前を呼んだのを聞いて「あ」と思ったんだから厳密には思い出したわけじゃないけど、この人は確か――。
「経理課の北条湊人だ。たった四人こっきりの同期の名前ぐらい覚えとけ、管工事課の柴田春凪」
そうそう。
このめちゃくちゃ偉そうな物言い。
眼鏡の奥から鋭い眼光で品定めでもするみたいに私を睨め付けてくるのも、いかにも値踏みしてるみたいで〝経理課〟っぽい。(あ、経理のかた、すみません! あくまでも北条くんは、の話です)
入社式のときにも一番近付きがたいオーラが出ていて、関わり合いになるのはよそうと思ったのを思い出す。
もう一人いた子犬みたいに人懐っこい印象の男性は、確か営業にまわされたはず。名前はやっぱり覚えていないんだけどっ。
「だぁ~かぁ~らぁ~。そんなに親しくなってもねぇのにいきなり呼び捨ては良くないぞ、北条」
足利くんがすぐにフォローを入れてくれたけれど「だったらお前も俺のことは北条さんと呼べ」と即座に切り返すとか、言われた張本人は一向に意に介した様子はない。
私はふたりのやり取りに圧倒されて、思わず二歩・三歩と後ずさってしまっていた。
あーん、やっぱり同年代の男の子、怖い!
「あ、ごめんね。柴田さん。俺ら結構つるんでっからいつもこんなんよ。引かんで?」
その気配を目ざとく察知すると、足利くんがズイッと距離を削ってきて。
私はあっという間に壁際に追い詰められる。
「書類重そうじゃん? 持とうか?」
言われて足利くんに手を差し出されたけれど、私はふるふると首を振って辞退申し上げた。
「上司に頼まれてる大切な書類ですので」
人様の手に渡すわけには――。
実際は別に大した書類ではないんだけど、宗親さんから頼まれたのは私だと思うと、何となく意地を張りたくなった。
「そっか、了解」
全然気分を害した感じもなくそう言ってくれる足利くんにホッとしたのも束の間。
「――結婚すんの?」
今まで黙って私と足利くんのやり取りを眺めていた北条くんが、いきなり口を開いてドキッとしてしまった。
しかも内容がそれ。
手がフリーのときはなるべく身体の影になるようにして隠していた指輪なのに、今はたまたま両手で書類を持っていて隠し損ねてしまっていた。
それを、北条くんに見咎められたらしい。
「経理課の北条湊人だ。たった四人こっきりの同期の名前ぐらい覚えとけ、管工事課の柴田春凪」
そうそう。
このめちゃくちゃ偉そうな物言い。
眼鏡の奥から鋭い眼光で品定めでもするみたいに私を睨め付けてくるのも、いかにも値踏みしてるみたいで〝経理課〟っぽい。(あ、経理のかた、すみません! あくまでも北条くんは、の話です)
入社式のときにも一番近付きがたいオーラが出ていて、関わり合いになるのはよそうと思ったのを思い出す。
もう一人いた子犬みたいに人懐っこい印象の男性は、確か営業にまわされたはず。名前はやっぱり覚えていないんだけどっ。
「だぁ~かぁ~らぁ~。そんなに親しくなってもねぇのにいきなり呼び捨ては良くないぞ、北条」
足利くんがすぐにフォローを入れてくれたけれど「だったらお前も俺のことは北条さんと呼べ」と即座に切り返すとか、言われた張本人は一向に意に介した様子はない。
私はふたりのやり取りに圧倒されて、思わず二歩・三歩と後ずさってしまっていた。
あーん、やっぱり同年代の男の子、怖い!
「あ、ごめんね。柴田さん。俺ら結構つるんでっからいつもこんなんよ。引かんで?」
その気配を目ざとく察知すると、足利くんがズイッと距離を削ってきて。
私はあっという間に壁際に追い詰められる。
「書類重そうじゃん? 持とうか?」
言われて足利くんに手を差し出されたけれど、私はふるふると首を振って辞退申し上げた。
「上司に頼まれてる大切な書類ですので」
人様の手に渡すわけには――。
実際は別に大した書類ではないんだけど、宗親さんから頼まれたのは私だと思うと、何となく意地を張りたくなった。
「そっか、了解」
全然気分を害した感じもなくそう言ってくれる足利くんにホッとしたのも束の間。
「――結婚すんの?」
今まで黙って私と足利くんのやり取りを眺めていた北条くんが、いきなり口を開いてドキッとしてしまった。
しかも内容がそれ。
手がフリーのときはなるべく身体の影になるようにして隠していた指輪なのに、今はたまたま両手で書類を持っていて隠し損ねてしまっていた。
それを、北条くんに見咎められたらしい。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ただいま冷徹上司を調・教・中!
伊吹美香
恋愛
同期から男を寝取られ棄てられた崖っぷちOL
久瀬千尋(くぜちひろ)28歳
×
容姿端麗で仕事もでき一目置かれる恋愛下手課長
平嶋凱莉(ひらしまかいり)35歳
二人はひょんなことから(仮)恋人になることに。
今まで知らなかった素顔を知るたびに、二人の関係は近くなる。
意地と恥から始まった(仮)恋人は(本)恋人になれるのか?
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる