【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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お先にどうぞ

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「あ、そうだ! 週末だしさ。これから……どう? 呼び掛ければ同期みんな、割とすぐ集まれると思うんだけど」

 身振り手振りでお酒を飲む仕草をされて、私は慌てて顔の前で手を振り回して頭を下げた。

「ごっ、ごめんなさいっ。今日は――」

 これから宗親むねちかさんとの初夜がっ。
 考えただけで顔がぶわりと熱を持ってしまう。

「あっ、もしかして彼氏とデート?」

 その表情を見て、そう思われてしまったみたい。

 至極もっともな足利あしかがくんの問いかけに、私は咄嗟、照れ隠しも手伝って「かっ、彼氏なんて居ないですっ」と答えてしまっていた。

 宗親むねちかさんは私の夫(偽装だけど)であって、彼氏ではない。……だから間違いじゃない、よ、ね?


 そんなことを思って、さっきより遠ざかってしまった宗親むねちかさんの後ろ姿を見つめる私に、足利くんが「そっか、彼氏いないんだ」と嬉しそうにつぶやいた。

 でも意識ここに在らずの私は、それには気付けなかった――。



***



 足利あしかがくんとなかなか離れられないままに歩き続けているこの状況で、織田おりた課長の車に乗り込むのはまずいんじゃないの?と思い始めてソワソワする。

(な、なんとか足利あしかがくんとさよならしなければっ)

 色々考えた私は、

「……あっ、もしもしっ?」

 電話がかかってきたていを装って、それに応答する振りをしながら、足利くんにごめんなさい、お先にどうぞ、とジェスチャーをする。
 お願い、どうかこのまま!……と祈る様な気持ちでの演技だったんだけど、足利くんは私の目論見もくろみ通り、あっさり手を振って離れてくれた。

(よかった!)



***



 私と宗親むねちかさん、婚姻はしたはずだけれど、宗親むねちかさんがそのことを社に公表する必要はないとおっしゃったから、きっと足利あしかがくんが駐車場までずっと一緒だったらよろしくなかったと思うの。


 宗親むねちかさん曰く、婚姻の件を公にしたら仕事がやりづらくなるし、何より同じ部署で働けなくなる可能性が高いから、というのが理由で。
 私も宗親むねちかさんと離れるのは嫌だから、「内緒にする」という提案にうなずいたんだけど。

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