【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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22.玉ねぎが目にしみただけ

たまには離れてみるのも

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柴田しばたさん、この見積書の作成頼めますか? ――僕は午後からあちこち回ってこないといけないので」

 婚姻届のことから数日が過ぎた頃。

 職場で宗親むねちかさんが、珍しく別行動の旨を告げていらした。

 何か困ったことがあってもすぐには助けられないけれど大丈夫ですか?と言外に含ませてくる宗親むねちかさんに、そう言えばたった半日とはいえ、丸っきり一人にされるのは入社以来初めてだったぁ~!と気付かされてドキドキする。

 いつもならどこに出掛ける折にも付いてくるように言われてばかりだったのに、本当珍しい。

 きっと、そんな思いが顔に出てしまっていたんだと思う。

「もしかして寂しいんですか? ――

 不意に距離をグイッと削られて、耳元をかすめそうな距離、ささやくようにそう問われた私は、突然耳を侵食してきた低音イケボに慌てて耳を押さえて真っ赤になった。

 プライベートと違い、職場ではちゃんと苗字で呼び合っているのに、わざと「春凪はな」と呼ばれたことにも心臓をバクバクさせられて。

 そんな私の様子を瞳を細めて楽しそうにご覧になる宗親むねちかさんに、「絶対揶揄からかわれたぁ~!」と理解した。

しゃびしいわけありまん!」

 でっ、出だししくじった上に噛んだっ!
 恥ずかしぃーっ!!


 宗親むねちかさんの意地悪への怒りと、たったそれだけのことにいとも容易く翻弄ほんろうされてしまう自分の不甲斐なさに感情がたかぶり過ぎてしまったみたい。

 決まり悪さに涙目になって、それでも負けたくない一心で宗親むねちかさんを睨みながら「つっ、常とは違う指示をなさるから……そのっ、へっ、変に思っただけです!」としどろもどろになりながらも何とか言い募ったら、「冗談ですよ」と腹黒スマイルでサラリといなされる。

 その上で、「いま頼んだ見積書、本当に急ぎなんです。明日の朝イチで使いたいので」と肩をポンと叩かれて。

「頼りにしています」

 そう付け加えられて柔らかな眼差しを向けられた私は、宗親むねちかさんから仕事の上で少しは信頼され始めたのかな?と嬉しくなる。

 それで、ムスッとしていたのも忘れてパァッと笑顔になった。

「お任せください。織田おりた課長!」

 手渡された資料を手にガッツポーズをしてみせたらクスッと笑われて、その笑顔に「絶対チョロいって思われた!」って、今更ながらに赤面する。

 あーん、私のバカ!

 職場では(職場でも)頼りにしまくりの織田おりた課長の不在は不安だけど、家でも職場でもずっと一緒なんだもん。

 たまにはこうして離れてみるのも大事だよね?

 そう自分に言い聞かせた。
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