【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ！

19.キミが思っている以上に僕は

ロックフォール

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「そう言えば春凪はな。ブルーチーズはお好きですか？」

　服が宜しくないし、どうやって部屋に戻ろうかな？とか考えていたはずなのに、ふと思い出したようにそう問い掛けられた私は、思わず「大好きです！」と身を乗り出してしまう。

　同居を始めてすぐ、私が無類のチーズ好きだとバレてしまってから、私の機嫌が悪くなるとそれを懐柔するみたいにチーズを引き合いに出されるようになった気がする。

　冷蔵庫の中。宗親むねちかさんがそんな目論見もくろみのもと溜め込んだと思おぼしき高級そうなチーズが、いくつかひっそりとストックされているのを私、知ってるんだから。

（あのチーズ、いつもどこから仕入れておられるのかしら）

　宅配便が届いている気配はないのに増える、スーパーなどでは見たことのない銘柄ばかりの高級チーズに、私の大好物への興味はいや増すばかり。

　そう言えばお酒類もそんな感じで増えている気がするから、お酒とおつまみセットでどこかそう言うのを入手できる特殊な裏ルートでもお持ちなんじゃないかしら？とか、ソワソワしてしまう。


　でも、さすがにいくら一緒に住んでいるからと言っても人様のものを勝手には食べられないから、いつも「いつ解禁してくださるのかな？」と指を咥くわえて見つめているわけだけど。


　それを、宗親むねちかさんは大抵毎回こんなタイミングで出していらっしゃるの。


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　今日は宗親むねちかさんとしっかりお話したいから、酔わないようにロックじゃなくて水割り。

　冷蔵庫から出してきたミネラルウォーターと、向こうが見えてしまうくらい透き通ったカチ割り氷で作った水割りをひとくち含んだ私に、
「ロックフォールです」
　食べやすい大きさにカットされたブルーチーズが、宗親むねちかさんからタイミングよく差し出される。

　ちょっ、宗親むねちかさん！
　ロックフォールって、羊乳原料のブルーチーズじゃないですかっ！
　私これ、お店でしか食べたことないですっ！

　興奮のあまり、お行儀悪く直に手でつまんで小さく齧かじっちゃったけど、叱られなくてホッとする。

　ロックフォールは塩味がかなり強めだから、ちょっとずつ食べるのが好き！
　その塩味と芳醇な香りの中に、青かび由来の独特な鋭い酸味が光って、「そうそう、これこれ♥」と思いつつ。
　チーズの風味が消えないうちに、森薫ると謳われるジャパニーズウィスキーを迎え入れたら、口の中に絶妙なハーモニーが吹き抜けた。


　最近バタバタして行けていないけど、お気に入りのバー『Misokaミソカ』でもバーテンさんからこの組み合わせ、お勧めされたっけ。あーん、沁みるっ！

　そう言えば､宗親むねちかさんと出会ったのもあのバーだったよね。
　もう少し落ち着いたら一緒に行けたりするかな？
　ほたるにも会えてないし、彼女とも行きたいなぁ。