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18.勝算がおありなのですか?
あなたのしたいように
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『やぁねぇ。宗親さんのお母様よ?』
母に言われて、「そうだった!」と思いはしたのもの、何故うちの母から葉月さんのお名前が出るのか分からなくて困惑してしまう。
お母さんの話では、先日実家の方へ葉月さんからお電話があって、母と祖母と葉月さんの3人でお茶でもどうかしら?と誘われたらしい。
男性陣を最初から除外したような采配に、母が躊躇う素振りを見せたら、「女同士で腹を割って話してみたいの」と言われたみたい。
「父と祖父には後日主人の方から埋め合わせをさせるから」と付け加えられて、お父さんに電話を変わって欲しいと仰ったんだとか。
葉月さんが父とどんな話をなさったのかは母には分からなかったけれど、父は上機嫌で「行ってくるといい」と言ってくれたらしい。
祖母の方も母と同じような経緯で、地元の喫茶店で母と祖母は葉月さんと会ってきた、と――。
『春凪。葉月さんってすごい人ね』
お母さんがこんなに明るく声を弾ませることなんてお父さんが出張などで家をあけるときぐらいだったから、私は今、お父さんは留守かしら?とか思ってしまった。
「お父さん、お出かけ中なの?」
それで話の流れを無視してそう言ったら、『え? 居間にいるわよ?』と返ってきて。
思わず「えっ!?」と声を上げたら、『だってお母さんね、目が覚めたんだもん』とか。
私は何が何やら分からないままに、お母さんのマシンガントークを聞かされて。
情報が処理しきれなくて意識が遠のきかけた頃、『それでね、春凪ちゃん。この間の宗親さんとのことだけど――貴女は貴女のしたいようにすればいいと思うの』って言われた。
「私の……したいように……?」
思わずつぶやいたら『そう。好きな人のところへお嫁さんに行きたいなら行っちゃいなさい! 柴田に縛られることなんてこれっぽっちもないんだから!』と言い放たれて。
私はお母さんの自信たっぷりなその口ぶりに、ますます混乱してしまう。
「それってお父さんとおじいちゃんは……」
恐る恐る問いかけたら、
『あの人たちが反対してたってお母さんとおばあちゃんは賛成だから。それでいいじゃないの』
って呆気らかんと返された。
「え。でもお母さん……っ?」
尚も言い募ろうとした私に、お母さんが凛とした声音で言い放つ。
『忘れたの? 春凪。――柴田は女系家族なのよ?』
私はそこで、いつか母に言われた言葉を思い出した。
――柴田家には呪いのように女の子しか生まれない。
――きっと、将来春凪ちゃんが産む子も女の子ばっかりよ。
『お父さんもおじいちゃんも柴田の血なんて引いてやしないんだもの。部外者に好き勝手言わせる義理なんてなかったんだわっ。――どうしてお母さんもおばあちゃんも、今までそんな単純なことに気付けなかったのかしら。私たち、葉月さんのお陰でそれに気付けたの』
お母さんの言葉に、私は息を呑んだ。
母に言われて、「そうだった!」と思いはしたのもの、何故うちの母から葉月さんのお名前が出るのか分からなくて困惑してしまう。
お母さんの話では、先日実家の方へ葉月さんからお電話があって、母と祖母と葉月さんの3人でお茶でもどうかしら?と誘われたらしい。
男性陣を最初から除外したような采配に、母が躊躇う素振りを見せたら、「女同士で腹を割って話してみたいの」と言われたみたい。
「父と祖父には後日主人の方から埋め合わせをさせるから」と付け加えられて、お父さんに電話を変わって欲しいと仰ったんだとか。
葉月さんが父とどんな話をなさったのかは母には分からなかったけれど、父は上機嫌で「行ってくるといい」と言ってくれたらしい。
祖母の方も母と同じような経緯で、地元の喫茶店で母と祖母は葉月さんと会ってきた、と――。
『春凪。葉月さんってすごい人ね』
お母さんがこんなに明るく声を弾ませることなんてお父さんが出張などで家をあけるときぐらいだったから、私は今、お父さんは留守かしら?とか思ってしまった。
「お父さん、お出かけ中なの?」
それで話の流れを無視してそう言ったら、『え? 居間にいるわよ?』と返ってきて。
思わず「えっ!?」と声を上げたら、『だってお母さんね、目が覚めたんだもん』とか。
私は何が何やら分からないままに、お母さんのマシンガントークを聞かされて。
情報が処理しきれなくて意識が遠のきかけた頃、『それでね、春凪ちゃん。この間の宗親さんとのことだけど――貴女は貴女のしたいようにすればいいと思うの』って言われた。
「私の……したいように……?」
思わずつぶやいたら『そう。好きな人のところへお嫁さんに行きたいなら行っちゃいなさい! 柴田に縛られることなんてこれっぽっちもないんだから!』と言い放たれて。
私はお母さんの自信たっぷりなその口ぶりに、ますます混乱してしまう。
「それってお父さんとおじいちゃんは……」
恐る恐る問いかけたら、
『あの人たちが反対してたってお母さんとおばあちゃんは賛成だから。それでいいじゃないの』
って呆気らかんと返された。
「え。でもお母さん……っ?」
尚も言い募ろうとした私に、お母さんが凛とした声音で言い放つ。
『忘れたの? 春凪。――柴田は女系家族なのよ?』
私はそこで、いつか母に言われた言葉を思い出した。
――柴田家には呪いのように女の子しか生まれない。
――きっと、将来春凪ちゃんが産む子も女の子ばっかりよ。
『お父さんもおじいちゃんも柴田の血なんて引いてやしないんだもの。部外者に好き勝手言わせる義理なんてなかったんだわっ。――どうしてお母さんもおばあちゃんも、今までそんな単純なことに気付けなかったのかしら。私たち、葉月さんのお陰でそれに気付けたの』
お母さんの言葉に、私は息を呑んだ。
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