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17.わけも分からないままトントン拍子?

まるで呪い

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 小さかった私の頭を撫でながら、祖父が時折うわごとのようにつぶやく、「春凪はなが男の子だったら」という言葉は、女として生まれた私の自尊心を、少なからず傷付けたの。

 母は結局私以外に子供を授かることができなかったから、私の孫としての地位は幸いにして不動だったけれど、もしも弟が生まれていたらきっと――。


 男の子を望む割に母方うちの血族には男の子が生まれにくい傾向があるのだと、母が「まるで呪われてるみたいでいい気味ね」とつぶやいたのを私、聞いたことがある。

 ――きっと、将来春凪はなちゃんが産む子もの子ばっかりよ、という言葉とともに。


 私、おじいちゃんと、婿養子に迎えた義理の息子である父とのほうが実の娘である母と、よりも考え方が似ているというのを何だか皮肉だなと思ったりして。

春凪はなは大きくなったら地元の賢くて立派な男の人をお婿さんに迎えるんだよ。そうして柴田家しばたけに立派なの跡継ぎを産んでおくれ。わしに任せておけば大丈夫だから。な?』

 おじいちゃんが私を膝の上に乗せて頭を撫でながら繰り返し繰り返し投げかけた言葉は、私にとっては苦痛のろいでしかなかったと、本人は気付いているかしら。

 お父さんだって同じ。

『おじいちゃんとお父さんで、春凪はなには素敵なお婿むこさんを見つけてやるからな』


 要するにおじいちゃんとお父さんは、女の子は20歳はたちを過ぎるか大学を卒業するかしたら仕事なんてせず、堅実な男性と所帯を持つのが何よりの幸せ、と言う考え方の人たちなのだ。

 それも、相当の良縁でもない限り、自分たちの息がかかった地元の男性が望ましいという感じ。


 おじいちゃんやお父さんの目論見もくろみが見えれば見えるほど、私はこの家から出たくて出たくてたまらなくなったの。

 おばあちゃんやお母さんみたいに、男の人の言いなりになって、依存して生きていくなんて絶対に嫌っ。

 そう思って大学進学を機に、忌々しいこの家を飛び出した。


(だけど……今の私、宗親むねちかさんに捨てられるんじゃないかとビクビクして……結局はおばあちゃんやお母さんと一緒じゃない!)

 ふとそんなことを思って……。
 結局は私も〝柴田家しばたけの女〟なのだと痛感させられて、自分の不甲斐なさにうつむいた。

(私なんかが宗親さんこのひとの隣にいてもいいのかな)

 視線を落とすうち、宗親むねちかさんのそばで偽装妻に成りすます事さえも、凄く凄く不釣り合いな気がしてきて。
 生家への宣戦布告あいさつの真っ最中だというのに、私はこの場から消えてなくなりたくなってしまう。
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