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15. タワーマンションの住人になりました!?

今日からよろしくお願いします

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 ――宗親むねちかさん! 何故いきなりそんな勝手に話を進めようと!

 そう抗議したくて慌てて宗親むねちかさんに疑問をぶつけようとしたけれど、時すでに遅し。

 閉ざされた扉の向こう側。
 あっという間にシャワーの音が聞こえ始めて、私はひとり、中途半端に廊下で立ち尽くす羽目になった。


 来週末というと、アパートの退去まであと1週間と差し迫った頃合いで。


 ――正直悠長にそんなことへ費やしている暇などないと思うのですよ、宗親むねちかさんっ!

 そう一生懸命心の中で叫んだ私だったけれど、当然宗親むねちかさんには届かなかった。


 ばかりか――。


***


「順番が色々あべこべになりましたが、そこはまぁ春凪はなのアパート退去期日までに時間がなさ過ぎたから、ということで。――仕方がないと割り切って、許して下さいね?」

 宗親むねちかさんが、にっこり笑って私の両肩に手を乗せていらして。

 至近距離。極上の腹黒スマイルを向けられた私は、半ば条件反射で「ヒッ」と声を上げて後退あとずさりたい衝動にかられる。
 けれどガッツリ両肩に乗せられた手が、決して撤退を許してはくれないの。


「改めまして。今日からよろしくお願いしますね。――柴田しばた春凪はなさん」

 小首を傾げるようにして告げられた、そんなセリフ。
 その、格好良さと可愛さの見事な融合っぷりに、ほにゃにゃ~んと一瞬心を奪われかけてから、ふるふると首を振る。

 ――い、今の仕草は反則ですっ。ずるいです、宗親むねちかさんっ!


 私はなるべく、宗親むねちかさんのハンサムプリティオーラからのダメージを受けないよう、いそいそと視線をそらしながら、「よ、よろしくお願いします……」と不承不承ふしょうぶしょうながらの小声で応えた。

 周りを見回すと、私のアパートから運び込まれた荷物はあらかた整理整頓されて、あるべき場所に仕舞われた後。
 およそ今日引っ越してきたばかりの人間がいる空間には見えないくらい整っているの。

 でも、よく目を凝らせば、そこここに違和感があるのもまた事実で。


 だってほらあそこ。

 宗親むねちかさんチョイスのスタイリッシュな食器たちが並ぶ食器棚の中、場違いな空気をビンビンに振りまきつつも収まった、私愛用のパステル調で描かれたナマケモノ柄のマグカップが!

 その絵面はとっても間抜けで異質。まるでこの高級タワーマンションにおける私そのものみたいに見えた。
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