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11.だったら試してみればいい

僕にはキミが必要なんです

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「先程も言ったでしょう? 春凪はな以外にこの役を任せたくないからです」

 宗親むねちかさんは私の何をそんなに気に入ってくださったんだろう。

 まさか容姿が、ということはないと思うので……恐らくは中身――ぎょしやすいところなんか――を見染められたのかな?

「私のこと、従順で飼い慣らしやすい人間だと思っていらっしゃるんだとしたら、大間違いですよ? 私、割と言いたいことはハッキリ言っちゃうタイプです」

 ――それ、分かっておられます?

 そう思って拗ね顔のまま宗親むねちかさんを睨みつけたら、クスッと笑われて。「僕はむし春凪はなのそういうところが気に入っていますと再三お話したつもりだったんですが……」とウインクされた。


 もぉ、やめてくださいっ!
 カッコ良すぎてニヤけそうになるので!

 ――ここで笑ったら負けだっ。

 そう思って唇に力を入れる私に、

「っていうか――」

 心底楽しそうに声を出して笑いながら、「春凪はな、ひょっとして自分が従順だと思っているんですか?」って失礼じゃないですか?

「わ、私っ、素直過ぎて……宗親むねちかさんには結構好き勝手扱われてきたと思うんですけど!?」

 ムッとして宗親むねちかさんを睨むように見上げたら、「キミが僕の言うことに従うのは、納得がいった時限定でしょう?」と頭をふんわり撫でられる。


「ちょっ、やめてください」

 慌てて一歩後ずさって彼の手を避けたら「ほら、理不尽だと感じたときは、そうやって遠慮なく抵抗する」って瞳を細めていらして。


「さっきも春凪はな、僕の金銭感覚がおかしいって叱ってくれましたよね?」

 さっき、というと結局受け取ってもらえず終いのギフトカードの事を話したときだよね?

 そう思って小さくうなずいたら、宗親むねちかさんが珍しくちょっぴり困ったような顔をなさって。


「自分で言うのも何なんですけど……僕はどうも世間様とはズレた所が散見されるようなんです。特に金銭感覚――」

 と大きく溜め息を吐きながら私を見つめるの。

「だからね、春凪はなには僕が変なことをした際、軌道修正をしていただきたいのです。僕に臆することなくバシバシ物が言える女の子なんて、正直初めて出会いました。だから、――僕にはキミが必要なんです」

 真剣に、「キミが必要だ」と言われてチョロ子の私がグラつかないはずがない。

 ましてや宗親むねちかさんは、私にとって好みのお顔のど真ん中。


 物凄く照れ臭いんですがっ。
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