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10.アレもコレも布石

宣戦布告の勧め

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「基本的には従順だけど、僕が間違ったことをした時には自分の意見を臆さずはっきり言える。そんなキミは、僕にとって理想的で奥さんです。そう簡単に手放す気はありません」

 それは喜んでいいのでしょうか?
 それとも失礼な!って怒らなきゃいけないでしょうか?

 色々突っ込みたいことは満載だけれど、とりあえず1番伝えたいことを優先する。

「あ、あの……例えばなんですけど……お役所に書類は出さずに同居する形で結婚のだけするというのはどうでしょう?」

 どうしても私と〝夫婦という体裁ていさい〟を取りたいなら、それで十分なんじゃないかしら?

 それならばお互い何の傷も負わずにいざと言うときにはサラリとさよなら出来るはずだし。

 そう思ったのだけれど――。



春凪はなの親御さんはそんなに人たちですか?」


 宗親むねちかさんに、掴まれたままの手に力を込められた私は、そわそわと瞳を揺らす。


「――少なくともうちの親はそんなに甘くありません」

 言われて、至極もっともな言い分に力なくしおれた私の元気を取り戻したいみたいに、「まぁでも――」と私の座るスツールをクルリと回すと、宗親むねちかさんが私を正面から見つめてにっこり笑った。


 いやん!
 宗親むねちかさんのその笑顔を見て、いい結果になったことなんてただの1度だってない気がするのですっ!


「書いたからと言って、すぐには提出したりはしませんから、そこは安心してください。ほら。まずはお互いの親に婚約報告――まぁ僕たちの場合はいわゆる宣戦布告ですね。それをせねばなりませんから」

「せ、宣戦布告……?」

 およそ婚約という甘い言葉に相応ふさわしくない喧嘩腰な文言もんごんに、思わず宗親むねちかさんの言葉を繰り返したらクスッと笑われて。

「ほら、僕も春凪はなも親の言いなりにならないためにタッグを組むわけでしょう? 春凪はなの方は僕と結婚したいって話したとして、親御さん、すぐに許してくれると思いますか?」

 聞かれて、私はふるふると首を振った。

 うちの両親は――特に父は――私の結婚相手は地元から、と強く思い描いている気がする。
 実家まで新幹線を使ってでさえ3時間近くかかるこの辺りで伴侶を見付けただなんて言ったら、絶対一悶着ひともんちゃくあるに決まっている。

 康平元カレと別れずに済んでいたとしても、きっとその壁はかなりの時間をかけて乗り越えないといけないものだったはずだから。

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