【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
64 / 366
10.アレもコレも布石

書類を作成してしまいましょう

しおりを挟む
「とりあえず今夜は泊まっていきますか?」

 にこやかに問いかけられて、思わず「えっ!?」と声が漏れる。

「だって春凪はな、お酒かなり飲んだでしょう?」

 いや、それ、飲まされたという方が正しいですからね!?

 そんな抗議の気持ちを込めてキッと睨みつけたら、ニコッと微笑み返された。


「ビールもつまみも美味しかったですね」

 言われてみれば美味しい燻製くんせいにほだされて、途中からはビール、自主的にグイグイいきました! くぅー、そこ、分かってて言ってるようにしか思えない辺り、意地悪さんめ!

 思ったけれど、確かにどちらも堪らなく美味しかったから、私は悔しいながらも無言で小さくうなずいた。

 言葉に詰まった状態で首肯しゅこうした私を見て、心底優しそうな笑顔を向けてくる宗親むねちかさんに、「この腹黒男ぉ~!」と思わずにはいられない。


「前から思ってましたけど、春凪はなはいっそ清々すがすがしいくらいに警戒心が薄いですよね。――上司として。あ……いや、これからは伴侶として、ですかね。まぁとにかく庇護者としてはかなり心配になります」


 不意に眉根を寄せて憐れんだ顔で見つめられた私には、その表情がすごく憎らしく思えて。


「私を罠にめようとする男性ひとなんて宗親むねちかさんぐらいしか思い浮かびません。だから貴方さえ何もしていらっしゃらなければご心配には及びません!」

 私は目一杯の皮肉を込めて冷たく言い放った――つもりだった。

 なのに。


「それはつまり、今現在貴女に言い寄っている男は僕だけだという告白ですね?」

 って嬉しそうに微笑んでくるとか……本当いい性格していらっしゃいますね?


「では、下手なライバルが出てこないうちに、早速あちらでチャチャッと書類を作成してしまいましょう」

 スッと手を引かれてソファーから立たされた私は、宗親むねちかさんに導かれるまま訳もわからず彼の後に続く。

 そうして紳士然とした態度で椅子を引かれてアイランドキッチン前に置かれたスツールに大人しく腰掛けてから、「ん?」と思った。


「これ、僕の方は全部埋めてありますので、春凪はなの方を埋めたら完成です。――あ、証人欄はまだですけど、それはからお気になさらず」


 何でもないことみたいに続けられて、握り心地の良い高級そうな黒い軸のペンを渡されて。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...