【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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9.利害が一致するとかしないとか

これはきっとお酒のせいね

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 頭を振ったせいでアルコールが急激に回って、グラリと身体が傾いた。

「おっと」

 それを片手で支えてくださってから、「――だから辞める、とか言いませんよね?」と低めた声音で問いかけられる。


「辞めたくは……ないです。だって辞めちゃったら、鬼上司のしごきに耐えた日々が無駄になって悔しいですもん」

 そう。
 せっかくこの1週間、死ぬ気で頑張ったのに。
 来週からだって、〝織田おりた課長〟の理不尽な要求に負けないつもりで立ち向かう気満々だったのに。

 苦手な同年代の同期の男の子達とだって、少しずつ馴染む努力をしようって思っていたのよ?

 辞めたいわけないじゃないですか。


「誰が鬼上司ですか」

 吐息まじりに言われて、そう言えばこの人がその鬼上司でしたっけ、と思って可笑しくなる。

 あー、これ。思ったよりお酒、回ってるかも。
 ビールはともかく、初っ端のブランデーがきいたかな。


「何だかいつもより優しいから、別人に見えて忘れてましたぁ~」

 へらりと笑ったら、「僕はいつも女性には結構優しくしてると思うんですけどね」とか。

 ――あらヤダ。それ、本気でおっしゃられてます?

 心の中でそう思って、何だか滑稽こっけいで堪らなくなる。

 クスクス声に出して笑い転げたら「飲み過ぎです」ってグラスを置かれて、代わりにキッチンからマグに温かいお茶を注いだものを持ってきて渡される。

 それを受け取りながら、

「自己評価甘すぎですね」

 満面の笑みでそう言ったら、

「でしたら僕がどれだけ優しいか、春凪はなにも身をもって実感させてあげましょうか?」

 って。

 そんなのすぐには無理に決まってるじゃないですか。

「お手並み拝見しまーす」

 笑いながらマグのお茶をそっと喉に流し込んで、すぐ横の宗親むねちかさんを見るとは無しに眺める。


「では――。お望み通り、僕が全力の優しさでもって、家なき子になりそうな部下を助けてしんぜましょう」

 やたら仰々ぎょうぎょうしい物言いをしてニヤリと笑うの、ずるい。

 その笑顔は、いつもの如何にも〝人畜無害です〟みたいな嘘くさい営業用スマイルではなくて。
 思わずゾクリとさせられてしまうような、とびっきりの腹黒スマイル。

 なのにいつもより数倍かっこよく見えて、胸が一際ひときわ大きくドキンッ!と高鳴った。

 これはきっと、お酒のせいね。

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