【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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9.利害が一致するとかしないとか

仕事はどうするつもりなんですか?

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 一緒に出されていた、どこぞの窯元かまもとからやってきたような小皿に牛タンをひと切れ載せられて、「遠慮はしなくていいですよ」と言われたら食べるしかないよね?

 食欲に負けてしまう自分にあれこれ言い訳をしながら、思い切って肉塊を口に放り込んだら牛タン特有のコリコリした食感と、香ばしいスモーク臭がたまらなく美味しくて。

「んー、これっ! 最高ですっ!」

 無意識にグラスのビールをあおって、上機嫌にうなってしまう。

 味も結構しっかりついていて、本当にビールに合う!


「私、家では発泡酒しか飲めないんですよ~。お金ないんで」

 いわゆるビールテイスト飲料的なもの。

 それでも十分美味しいのだけれど、やっぱりちゃんとしたビールを飲むと、違うなって思う。


「キンキンに冷えたビールって、何でこんなに美味しんでしょう!」

 しかも真っ昼間っから飲んでいると言う背徳感が、うまみに拍車をかける。


 ついつい嫌なことから目を逸らして、楽しいことに流れたくなるのは私の悪い癖。


春凪はな、本題からそれてますよ?」

 しかし、さすがそんな私を日々上手にアゴで使っていらっしゃるだけのことはある。

 すぐ敵前逃亡しようとする負け犬の首根っこを捕まえるみたいに、問題に向き合うよう仕向けられる。


「だって……考えたってどうしようもないじゃないですか。私、就職が決まった時、自分へのご褒美だー!って無計画に車買って貯金使い果たしちゃいましたし……今から好条件のアパートが見つけられたとして、敷金礼金払える気がしないんですものっ」

 ギュッとビールのグラスを握りしめて、

「小さい頃からそうでしたけど……結局――親の言いなりになって田舎に連れ戻されるしかないんです、きっと」

 半ば自棄ヤケになってそう言ったら、鼻の奥がツンとして視界がぼんやり滲んだ。


「――仕事はどうするつもりなんですか? うちの会社、ご実家から通える距離なんですか?」

 探るような目をして聞かれて、「まさかっ!」と首をブンブン振る。


 この町からうちの実家まで、新幹線で2時間以上かかる。
 降りた駅から会社までだって、在来線に乗り換えて30分ちょっと乗り継いで、たどり着いた先の最寄駅から徒歩で更に20分。

 おまけにあちら――実家の立地から考えても、新幹線の駅まで車で30分はかかるの。

 軽く見積もっても、通勤にトータルで3時間以上コース。

 
 さすがにその距離を、毎日通ってこられるわけがない。
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