【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
50 / 366
8.それって絶対計画的犯行ですよね?

ゆっくりでいいですからね

しおりを挟む
 ソワソワしながらお尻を浮かせたり付けたりを繰り返していたら、織田おりた課長が「何も手伝う必要はありませんからね」とこちらに背中を向けたまま言ってくる。


 ――ちょっ、何で分かったんですかっ。後ろにも目がついてるみたいでめっちゃ怖いんですけどっ。


 思いながら、「で、でもっ」と、尚も言い募ろうとしたら、「来客があって、おもてなしをするのは家主ホスト仕事つとめでしょう?」といなされる。

 それで仕方なく浮かしかけた腰をソファにつけておとなしく待ってはいるものの、織田おりた課長が言うと〝ホスト〟が別の意味に聞こえてザワザワするな、とか思ってしまう。


 せっかく座り心地のいいソファなのに、背もたれに背を預けて深く座るとかは到底無理で、今にも落っこちそうなくらい浅く浅く腰掛けて両膝りょうひざの間が開かないよう、斜めに下ろして揃えた足にグッと力を込める。

 ――ああ、これ、面接の時の椅子の腰掛け方だ。絶対疲れるやつ。


 そんなことを思っていたら、珈琲の良い香りがし始めて、ややして「どうぞ」と、ソファ前に置かれたネストテーブルに湯気のくゆるコーヒーカップが2つ置かれた。

 白っぽい大理石調天板のローテーブルに、違和感なく溶け込む、耐熱ガラス製と思われる、透明なコーヒーカップ。

 何これ、何これ! カップまでスタイリッシュとかっ。

 可愛い癒し系絵柄で描かれた、パステルタッチのナマケモノイラストのマグカップを愛用している私は、容器が透き通っていると言うだけで落ち着かない。


 私がいつもカフェラテばかりを飲んでいるからかな。

 私の前に置かれたものには少量の珈琲に、たっぷりのミルクが注がれているようで、かなりのところ白っぽい茶色だった。

 逆に、少し離れた位置に置かれた織田おりた課長のものはブラックに見えるので、「おもてなしする」という言葉も満更嘘というわけではなかったのかも知れない。

 私のことなんて全然興味がないのかと思いきや、こんな風に結構見られてる?と感じるようなことをされて……それがなんだか凄くくすぐったいの。

 「わざわざ気遣っていただいて有難うございます」と前置きしてから、「いただきます」とカップを手に取って、ふと思い出す。

 そう言えば、お代わりで買ったアイスカフェラテ、ほとんど飲まずにカフェお店を出てしまった。

 もったいないことをしたな、作ってくれた方に申し訳ないな、という思いで自然眉根が寄ってしまう。


「話しにくいことならゆっくりでいいですからね?」


 それを、そう判断したらしい織田おりた課長にそんな風に言われて、私は慌てて首を振った。


「ち、違うんですっ。――そのことはそんなに話しにくいわけじゃなくてっ」

 情けなくはあるけれど、織田おりた課長には、陥没乳首という最大の秘密を知られていることを思えば、そんなに大したことじゃない。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...