39 / 366
7.貴方に頼れた理由
猶予はたったの2週間
しおりを挟む
「すみません、実家への連絡も怠っていました……」
つぶやくように言ったら、電話先で息を飲む気配があった。
その上で、とても言いにくそうに
『あの……そんな状況のなか大変申し上げにくいのですが、こよみハイツは立地がいい上に賃料が格安のアパートですので、その……、もう次の入居希望者が決まってしまいまして』
と続けられてしまう。
そんなっ。
現住民である私に何の断りもなく!?
そう思ったけれど、不動産屋さんからの再三の電話を無視して折り返さなかったのは、他でもない私だ。
それに、不甲斐ない娘に業を煮やして契約を打ち切る決定を下したのはうちの親――。
不動産屋に非はない。
思えば、両親からはずっと、大学卒業後にはすぐにでも地元に戻って結婚することを強く勧められていた。
実家は、昔気質の田舎体質の強い旧家然としたところがある家だから。
私のアパート更新契約不履行問題は、そんな親にとって私を呼び戻す絶好の機会だと捉えられてしまったに違いない。
自身も短大卒業後20歳やそこらで父と見合い結婚を決めた母からしたら、4年制大学を卒業し、22歳を過ぎてしまった私は、十分行き遅れという感覚みたいだったし。
そんな考え方、今時おかしいからね?と抗議しても、うちはうち、よそはよそと言われて話にならなかったのを思い出す。
〝子は親のもの〟という考えが強いのか、幼い頃からやたらと私の人生に干渉してくる親から逃げたくて、物凄く反対されたのを押し切る形で、奨学金を受けてでもそこに通いたい!と実家から通えないような遠方の大学を選んだ。
幸い学費については1人娘に奨学金を受けさせるなんて見栄が許さなかったのか、出してもらえたのだけれど。
そうして掴んだ実家脱却からの自由を失いたくなくて、私は就職先も親には相談せずに大学を起点に選択したのだ。
これで元カレと結婚出来ていれば鬼に金棒だったのだけれど、そこはうまくいかなかった。
私が、お金のことで親には迷惑をかけない、と頑なに取り決めているのだって、変に隙を見せて口出しされるのを避けたいが故だったのに。
こんな形で干渉されてしまうなんて思いもしなかった。
「……わかり、ました。それで――私、いつまでに退去すれば……」
意気消沈とした声音を隠せないまま。
それでも精一杯頑張ってそう問いかけた私に告げられた猶予は、たったの2週間だった。
つぶやくように言ったら、電話先で息を飲む気配があった。
その上で、とても言いにくそうに
『あの……そんな状況のなか大変申し上げにくいのですが、こよみハイツは立地がいい上に賃料が格安のアパートですので、その……、もう次の入居希望者が決まってしまいまして』
と続けられてしまう。
そんなっ。
現住民である私に何の断りもなく!?
そう思ったけれど、不動産屋さんからの再三の電話を無視して折り返さなかったのは、他でもない私だ。
それに、不甲斐ない娘に業を煮やして契約を打ち切る決定を下したのはうちの親――。
不動産屋に非はない。
思えば、両親からはずっと、大学卒業後にはすぐにでも地元に戻って結婚することを強く勧められていた。
実家は、昔気質の田舎体質の強い旧家然としたところがある家だから。
私のアパート更新契約不履行問題は、そんな親にとって私を呼び戻す絶好の機会だと捉えられてしまったに違いない。
自身も短大卒業後20歳やそこらで父と見合い結婚を決めた母からしたら、4年制大学を卒業し、22歳を過ぎてしまった私は、十分行き遅れという感覚みたいだったし。
そんな考え方、今時おかしいからね?と抗議しても、うちはうち、よそはよそと言われて話にならなかったのを思い出す。
〝子は親のもの〟という考えが強いのか、幼い頃からやたらと私の人生に干渉してくる親から逃げたくて、物凄く反対されたのを押し切る形で、奨学金を受けてでもそこに通いたい!と実家から通えないような遠方の大学を選んだ。
幸い学費については1人娘に奨学金を受けさせるなんて見栄が許さなかったのか、出してもらえたのだけれど。
そうして掴んだ実家脱却からの自由を失いたくなくて、私は就職先も親には相談せずに大学を起点に選択したのだ。
これで元カレと結婚出来ていれば鬼に金棒だったのだけれど、そこはうまくいかなかった。
私が、お金のことで親には迷惑をかけない、と頑なに取り決めているのだって、変に隙を見せて口出しされるのを避けたいが故だったのに。
こんな形で干渉されてしまうなんて思いもしなかった。
「……わかり、ました。それで――私、いつまでに退去すれば……」
意気消沈とした声音を隠せないまま。
それでも精一杯頑張ってそう問いかけた私に告げられた猶予は、たったの2週間だった。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる