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7.貴方に頼れた理由

不安な電話

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 カフェの外。……に出るだけでは何だか落ち着かなくて、私はいそいそと愛車に乗り込んで着信履歴を開いた。

 よく見ると毎日のように日に数回ずつ、くだんの不動産屋から不在着信が入っていたことに気がついて、ゾクッとする。
 いくら仕事がハードだったからって、これはまずいでしょ、と自分でも分かった。

 着歴には実家からのものが不動産屋との間に挟まるように幾度となく混ざっていて、「あー、これ……」って思う。

 私、不在に気付いたうちの何回か、実家からの着歴を見て、不動産屋からの着信もあったのに、ろくすっぽ確認もせずに「何だ、家からじゃん」って放置していたの。


 とりあえず実家は後回しにするとして、不動産屋の方を優先する。

『はい、ペリー不動産です』

 コール数回。私のスマートフォンに度々たびたび着信履歴を残していた馴染みの不動産屋は、私からの発信に案外すんなり応答した。

 いや、まぁ今の今までこの不動産屋さんと話が出来ていなかったのは、私がいつもあちらからの着信に応じなかったからなんだけど。


 落ち着いた雰囲気の、柔らかな女性の声音に、内心ホッとしつつ。

「あの、わたくし、こよみハイツの201号室に住んでおります柴田しばた春凪はなと申します。先日から再三ご連絡をいただいていましたのに……折り返しが遅くなって申し訳ありません」

『――こよみハイツの柴田さん……』

 先方のお姉さんがそうつぶやいた途端、『貸して』という男性の声がして。

 保留音も『お待ちください』もないままに電話の相手が代わってしまう。


柴田しばたさん? あー、良かった! やっと連絡がつきました!』

 今日も連絡が取れないようなら、直接アパートへ出向こうと思っていたと続けられて、私は本当に申し訳ない気持ちになる。
 それと同時、「そこまでして何の用が?」とにわかに不安になった。


 お家賃はちゃんと毎月指定の口座にお振り込みしているし、滞納だってないはず。


「あ、あのっ……。もしかして私の知らないうちにお家賃が値上がりしたとか……」

 恐る恐る問いかけたら『まさかっ。そんなことはありませんよ』と即座に返されてホッとする。

 でも――。

『お家賃は問題ないのですが、更新のお問合せに対するお返事も、更新料のお振り込みもありませんでしたので――』

 来月分のお家賃はお返しします、と言われてしまった。


「えっ!?」

 その、取り付く島もない物言いに、私はドキッとしてしまう。

「こっ、更新料はすぐにお支払いしますのでっ」

 通帳の残高が4桁なことも忘れて慌ててそう食い下がったら、

『申し訳ありません。あまりにも住んでいらっしゃる貴女と連絡が取れなかったため、先日契約主である親御さんにご連絡差し上げました。で、親御さんからも柴田しばたさんに連絡していただいたのですが、繋がらなかったみたいで。結局、〝娘は実家に帰らせますので退去でお願いします〟とお申し出がありました』

 優しく諭すように『お父様かお母様からその旨ご連絡はありませんでしたか?』と付け加えられて、私は不動産屋からの電話に混ざり込むように実家からの着信が幾度もあったことを思い出す。
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